研究課題/領域番号 |
25871055
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
山崎 大 国立天文台, 理論研究部, 研究員 (90531822)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原初磁場 / 宇宙背景放射 |
研究概要 |
1. 宇宙背景放射と初期密度場における原初磁場、副次 ・前景成分の制限 宇宙背景放射は銀河団スケール以下で前景成分である、Sunyaev-Zel'dovich (SZ) 効果、Lensing 効果、Possion noise、およびInfrared cluster point sourceを考慮する必要がある。これらを個々、もしくは一部と原初磁場を考慮したパラメータ制限は、過去の研究で行われてきたが、すべてを同時に考慮した原初磁場の制限はまだなかった。また、磁場のスペクトルは、インフレーション起源のpower lawモデルだけでない。特徴的スケールに依存する磁場生成モデルが提唱されている。以上から、物理的正確性の高い結果を得るために、研究代表者は原初磁場と縮退する可能性のある効果をすべて考慮した。そして、生成モデルの制限を視野に入れた原初磁場のスペクトル別の理論計算を観測と比較して、各々のパラメータを制限した。 2. 原初磁場と考慮したビッグバン元素合成とリチウム7問題解決策の探求 ビッグバン元素合成から予想されるリチウム7量は、観測で確認された結果より大きく、リチウム問題と呼ばれる。その解策として、ダークマター候補のアクシオンによる光子冷却やX粒子を考慮して、ビッグバン元素合成でのリチウム7の量を減らす試みがある。原初磁場、アクシオンおよびX粒子を同時に考慮したビッグバン元素合成から、関係するパラメータ範囲を制限しつつ、リチウム問題の解決策を示した。 3. 原初磁場のパラメータと起源の複合的制限および原初磁場を考慮した物理現象の定量的考察 1と3の結果を同時に考慮して原初磁場のパラメータを複合的に制限した。制限した原初磁場の起源・強度・分布を考慮して、磁場を考慮した宇宙物理現象を定量的に考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
宇宙背景放射と初期密度場における原初磁場、副次 ・前景成分の制限に関しては、申請した予算の大幅に減額による計算機環境の整備不足が影響し遅れたが、プログラムコードの改善による計算時間の短縮により、研究成果を論文として発表でき、計画より大幅に予算が制限された環境のもとでも目的通りの成果を出すことができたから。また、2014年度の研究計画である、「原初磁場と考慮したビッグバン元素合成とリチウム7問題解決策の探求」の一部、プログラムコードの開発と定性的考察に関して、前倒しして実行することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度に、2014年度の研究計画である、「原初磁場と考慮したビッグバン元素合成とリチウム7問題解決策の探求」の一部、プログラムコードの開発と定性的考察に関して、前倒しして実行することができため、2014年度は、アクシオン, X粒子、原初磁場のパラメータを理論計算と観測で制限されている4Heや重水素等の元素組成を比較して制限する。そして、そのパラメータ範囲内で、観測されているリチウム7量が生成可能かどうか調査する。 研究計画が当初の計画以上に推移していることと、2014年3月に新しい宇宙背景放射偏光揺らぎの観測結果が公開されたことを受け、2013年度に行った宇宙背景放射と初期密度場における原初磁場、副次 ・前景成分の制限において新い観測結果を反映させた発展研究を行う。
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