研究実績の概要 |
宇宙に存在する元素は、ビッグバン元素合成によりそのほとんどが合成された。ビッグバン元素合成で決まった軽元素組成は、宇宙の再電離、恒星進化や超新星爆発、それらに影響を受ける宇宙の化学進化を決めるにに重要な要素である。バリオン対光子比は、ビッグバン元素合成を特徴づける重要なパラメータの一つである。近年、宇宙背景放射の観測からバリオン密度比を制限することで、バリオン対光子比を制限できるようになり、バリオン対光子比による原初磁場を含めた様々なビッグバン元素合成モデルの検証が可能となった[Yamazaki & Kusakabe, PRD. 86, 123006(2012)]。 観測の向上や理論の進展にも関わらず、恒星の観測から推定できるリチウム7量と, 標準的なビッグバン元素合成から予想される リチウム7量との乖離が解決できず、リチウム7問題と呼ばれている。 現在、ビッグバン元素合成直後の光子冷却や、ダークマター候補であるX粒子による光分解反応、原初磁場等を考慮した新しいモデルによって、この リチウム7問題の解決に向けた研究が盛んに行われている。 このような背景のもと、当研究は、そのダークマター候補の一つであるX粒子、光子冷却、および原初磁場を組み合わせることにより、自然な形でリチウムを観測範囲まで減少させることができることを解明した。また、最新の観測によって制限された宇宙の軽元素組成の結果と、この新しいビッグバン元素合成モデルから算出した理論値と比較して、リチウム7問題が解決できる原初磁場およびX粒子のパラメータを探し出した[Yamazaki, et al., PRD. 90, 023001 (2014).]。
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