研究課題/領域番号 |
25871059
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
北田 亮 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (50526027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | fMRI / 視覚障害者 / 触覚 / 視覚 |
研究概要 |
本年度は「手による行動理解に関わる神経基盤は視覚脱失により変容するのか」に対する問いに答えるためのfMRI実験を実施した。実験は生理学研究所のMRI装置(Siemens Allegra)で実施した。平均年齢・男女比・利き手の同じ晴眼者28名と視覚障害者各28名(先天盲18名)が参加した。脳活動(BOLD信号)の測定中に、各群の参加者が3物体(手・車・急須)に触れ、その物体を識別する課題(触覚識別課題)を実施した。晴眼者はさらに(1)視覚で同じ物体を識別する課題(視覚識別課題)と(2)行動理解に関わる視覚領域であるExtrastriate Body Area (EBA)の同定課題を行った。その結果、(1) 先天盲でも晴眼者でも縁上回とEBA背側部の賦活が、他の物体に比べ手に対して賦活した。この活動は晴眼者の視覚条件でも触覚条件でも観察された。(2) その一方でEBAの腹側部は手に対する活動が、晴眼者に対し先天盲で減少していた。これらの結果は手による行動理解に重要とされるEBAは、視覚経験によって変容する部分としない部分があることを示している。本成果は、国内の研究会・学会で発表するだけでなく、国際的に著名な視覚障害者の研究者が集まったワークショップで招待講演を行った (The Blind Brain Workshop)。現在、成果をまとめ論文として投稿している。さらにアウトリーチ活動としてTBSの特別番組で実際に実験を実施、かつ解析結果を紹介し、視覚障害者に関わる脳研究の成果を一般社会に理解してもらえるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画調書に記載した2実験のうち1つを順調に終了させ、解析・論文執筆まで完了させることができた。その点で実験計画は研究計画調書通りに実施できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた知見に対する次の重要な問いは「なぜ先天盲ではEBA背側部のみが手に対する反応性を示し、腹側部は示さないのか」という点である。過去の研究からEBAには手の運動感覚の入力が到達することが知られている。一つの可能性はEBA背側部には視覚経験に関係なく運動感覚の入力が入るが、腹側部は機能が視覚脱失によって変容したため、運動感覚の入力から手に対する反応性を失ったという点である。現在、先天盲と晴眼者が手の動作を実施しているときの脳活動を比較する実験を実施しており、この研究成果とこれまで得られた知見を融合する予定である。さらに研究計画通り、模倣に関する心理物理学実験を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、①当初初年度に予定していた心理物理学実験を実施しなかったことと、②必要な物体模型の調達が本助成金を使用せずに行うことができたためである。 次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせ、当初予定していた心理物理学実験とEBAに関する追加のfMRI実験のために使用する。
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