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2014 年度 実施状況報告書

視覚脱失が社会的紐帯の形成メカニズムに与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 25871059
研究機関生理学研究所

研究代表者

北田 亮  生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (50526027)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード視覚障害 / 触覚 / fMRI / 視覚
研究実績の概要

昨年度は「他者の手の動作を理解することに関わる神経基盤は視覚脱失によって変容するのか」という問いに答えるため、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による実験を実施した。視覚による手の動作の認識には視覚野の一部であるExtrastriate Body Area(EBA)が関与することが知られている。本実験では先天盲でも晴眼者でも、EBAの背側部が他の物体(急須・車)に比べ手に触れたときに強く賦活することを発見した。その一方でEBAの腹側部は手に対する活動が、晴眼者に対し先天盲で減少していた。これらの結果は手の動作理解に重要とされるEBAは、視覚経験によって変容する部分としない部分があることを示している。本年度はこの成果をまとめ、The Journal of Neuroscience誌に発表した。この成果はプレスリリースされ、サイエンスポータルやナショナルジオグラフィックなどで取り上げられた。さらに医療法人鉄友会市民公開講座で本研究の成果を概説した。
本研究成果に対する次の重要な問いは「なぜ先天盲ではEBA背側部のみが手に対する反応性を示すのか」という点である。過去の研究からEBAには手の運動感覚の入力が到達することが知られている。そこでEBAの背側部は視覚経験に関係なく運動感覚の入力が入るため手に対する反応性が発達するという仮説を構築した。この仮説を検証するために、まず晴眼者を対象に手の動作を実施しているときの脳活動を測定し、EBA背側部が活動することを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度までに計画調書に記載した2つのうち1つの実験が完了し、成果を論文として発表できた。さらにこの成果から派生した問題に対する新たな実験を実施し、仮説どおりの結果を得ている。その点で実験計画は研究計画調書通りに実施できたといえる。

今後の研究の推進方策

先天盲が手の動作を行っているときの脳活動を実施し、「運動感覚情報がEBA背側部の発達を促進させる」可能性をさらに検証する。さらに昨年度までに実施できなかった触覚模倣に関する心理物理学実験を実施する予定である。

次年度使用額が生じた理由

先天盲が手の動作を行っているときの脳活動を測定する実験と、触覚模倣に関する心理物理学実験が十分実施できなかったため。

次年度使用額の使用計画

これらの実験を速やかに実施する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Interpersonal Touch Suppresses Visual Processing of Aversive Stimuli2015

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Kawamichi, Ryo Kitada, Kazufumi Yoshihara, Haruka Takahashi, Norihiro Sadato
    • 雑誌名

      Frontiers in Human Neuroscience

      巻: 9 ページ: 164

    • DOI

      10.3389/fnhum.2015.00164

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The brain network underlying the recognition of hand gestures in the blind: the supramodal role of the extrastriate body area2014

    • 著者名/発表者名
      Ryo Kitada, Kazufumi Yoshihara, Akihiro T Sasaki, Maho Hashiguchi, Takanori Kochiyama, Norihiro Sadato
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 34 ページ: 10096-10108

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.0500-14.2014

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Attenuation of the contingency detection effect in the extrastriatebody area in autism spectrum disorder2014

    • 著者名/発表者名
      Yuko Okamoto, Ryo Kitada, Hiroki C. Tanabe, Masamichi J. Hayashi, Takanori Kochiyama, Toshio Munesue, Makoto Ishitobi, Daisuke N. Saito, Hisakazu T. Yanaka, Masao Omori, Yuji Wada, Hidehiko Okazawa, Akihiro T. Sasaki, Tomoyo Morita, Shoji Itakura, Hirotaka Kosaka, Norihiro Sadato
    • 雑誌名

      Neuroscience Research

      巻: 87 ページ: 66-76

    • DOI

      10.1016/j.neures.2014.06.012

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 他者の行動理解と模倣に関わる脳内ネットワーク2015

    • 著者名/発表者名
      北田 亮
    • 学会等名
      日本認知科学会知覚と行動モデリング(P&P)研究分科会ワークショップ「社会神経科学と知覚研究」
    • 発表場所
      東京女子大学7号館7105教室(荻窪, 東京)
    • 年月日
      2015-03-14 – 2015-03-14
    • 招待講演
  • [学会発表] 他者の身体と行動の理解に視覚経験は必要か?2015

    • 著者名/発表者名
      北田 亮
    • 学会等名
      関西学院大学CAPSシンポジウム 「こころと身体の関係を捉え直す―学際的な身体科学研究の新展開
    • 発表場所
      関西学院大学上ケ原キャンパス図書館ホール (西宮, 兵庫)
    • 年月日
      2015-02-21 – 2015-02-21
    • 招待講演
  • [学会発表] 触覚による物体認知の脳内ネットワーク2014

    • 著者名/発表者名
      北田 亮
    • 学会等名
      第六回多感覚研究会
    • 発表場所
      広島大学霞キャンパス応仁会館 (広島, 広島)
    • 年月日
      2014-11-13 – 2014-11-13
    • 招待講演
  • [学会発表] The brain network underlying the recognition of gestures in the blind: the supramodal role of EBA2014

    • 著者名/発表者名
      Ryo Kitada, Kazufumi Yoshihara, Akihiro T Sasaki, Maho Hashiguchi, Takanori Kochiyama, Norihiro Sadato
    • 学会等名
      The 20th Annual Meeting of Organization for Human Brain Mapping
    • 発表場所
      CCH-Congress Center (Hamburg, Germany)
    • 年月日
      2014-06-12 – 2014-06-12
  • [備考] 生まれつき目が見えなくても、 相手の手の動作を認識するための脳のネットワークは形成される

    • URL

      http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2014/08/post-276.html

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公開日: 2016-06-01  

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