研究課題/領域番号 |
25871060
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
森 琢磨 生理学研究所, 生体情報研究系, 特任助教 (70545798)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 越シナプストレース / 狂犬病ウイルス / 視覚 |
研究実績の概要 |
前年度に実施した研究により、視覚野に対して遺伝子を導入するためには子宮内エレクトロポレーション法を改良する必要性があることが示唆された。そこで平成26年度はまず、視覚野2/3層錐体細胞に対する子宮内エレクトロポレーション法の最適化を実施した。視覚野は成体マウスにおいて尾側に位置しているため、体性感覚野にエレクトロポレーションするときと比べ、ピンセット型電極の陽極を尾側に傾けて子宮内エレクトロポレーションを実施した。しかしながら、この手法では視覚野より外側に位置する聴覚野に遺伝子導入される例が多く見られた。そこで、より内背側に陽極を配置できるようにピンセット型電極の形状を変更したことで、効率良く視覚野に遺伝子を導入することができるようになった。 年度後半には、この改良型電極を使用した子宮内エレクトロポレーション法と越シナプストレース法を組み合わせることで、視覚野に直接入力するシナプス前細胞の脳内分布を解析した。その結果、視覚野2/3層錐体細胞も視床から直接シナプス入力を受けることが明らかになった。前年度、視床の特異核および非特異核から体性感覚野への入力様式を成果として報告した。本年度の研究の成果の一つとして、視覚野においても同様に視床の特異核および非特異核から入力を受けていることが明らかになった。このように体性感覚野と視覚野では類似した視床皮質回路を形成しているが、一方で視床の特異核および非特異核に分布する細胞数の割合は異なっていた。このことは、同じ視床皮質回路であっても、処理する知覚情報が異なると、視床の特異核および非特異核の重み付けが異なることを示していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、視覚系視床に存在する細胞の空間分布だけでなく、形態的特徴を解析することを目的にしている。実験期間中に、研究代表者の所属する研究室の引っ越しがあったため、その間の実験試料の作成および解析ができない期間があった。そのため、視覚系視床の細胞の形態解析は十分に行うことができていない。 一方で前年度に課題となっていた視覚野に対する子宮内エレクトロポレーションは改良され、実験が順調に進んでいることから、達成度はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、視覚系視床に分布する神経細胞の形態的特徴を解析することが主な目的である。これまでの実験によって、視覚系視床神経細胞に緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)を発現させることができた。これまでに、それらマウスより固定組織標本を得ることができている。今後は、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、GFPで可視化された神経細胞の形態を解析する予定である。子宮内エレクトロポレーションを組み合わせた越シナプストレース法は、非常に効率良く視床神経細胞をトレースできてしまう。現在は多数の脳切片標本から利用可能な標本を選別し解析しているが、個々の視床神経細胞形態を観察できる標本を得るための「低効率な実験条件」を検討することが、本研究課題を推進する上で役立つと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年4月に、研究機関の耐震化工事に伴い、所属研究室が別キャンパスに移転した。その移転に伴い、研究設備が使用できない期間が生じ、実験を効率良く実施することができなかった。また、移転に伴うストレスが原因と思われる動物の死亡事故のため、実験のやり直しをする必要があった。その結果、一部研究計画に遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究では、マウスに遺伝子導入する。遺伝子導入に使用されるプラスミドを精製する為の試薬をおよそ200千円購入する。またプラスミドを導入される妊娠マウスをおよそ100千円購入する。またこれまでに作成された組織標本を観察する為に必要な試薬およびガラス器具などをおよそ500千円程度購入する予定である。
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