本研究の目的は、砂漠化前線地域である半乾燥地域において小規模農民および牧民のレジリアンスを考察し、日常も災害後も砂漠化の悪循環へ陥らない食料確保システムを把握することであり、平成25~27年度に実施された。 本研究では、人間社会におけるレジリアンスを3つに分けて検討した。1) 被害を受けぬよう日常的に準備し、改善する適応能力、2) 自然災害後にショックを回避・軽減し、被害を回復する対処能力、3) システムを再構築(トランスフォーム)する能力である。 西アフリカおよび南部アフリカ半乾燥地における研究活動を通じて得られた本研究の成果を以下に示す。 1) 適応 : 安定的な食料確保を可能とするための生業活動および人間関係の強化について考察した。具体的には、降雨変動への対応を可能にする代替作物の採用、日常生活を通したセーフティネットの強化を報告した。 2) 対処 : 旱魃等による食料不足など危機的状況下における対処行動について分析し、成果を公表した。具体的には、救荒植物、セーフティネットの活用を報告した。 3) 再構築 : 大旱魃により深刻な被害があった際の食料確保システムの再構築を考察し、成果を公表した。食料獲得活動の新規導入や、他者による労働補完などによる再構築を報告した。 本研究の重要性は、砂漠化発生の原因となりうる食料獲得活動をレジリアンス概念を通して、活動主体である世帯・個人というミクロレベルで実証的に分析した点である。また、本研究の意義は、これまで国際機関・政府・NGOにより住民不在の支援が行われることの多かった砂漠化前線地域において、本研究の結果は住民生活の理解に貢献する点であり、住民を中心にすえた支援の礎となる。本研究の学術的な評価として、日本沙漠学会第24回学術大会ベストポスター賞(2013)、日本沙漠学会平成25年度奨励賞/片倉もとこ賞(2014)の受賞が挙げられる。
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