研究課題/領域番号 |
25871065
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
武田 和久 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (30631626)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | イエズス会士 / グアラニ先住民 / 住民名簿 / カシカスゴ / 軍事 |
研究概要 |
本年度はスペイン、セビリアにおいて在外研究の年に相当した。この機会を利用して、主として、インディアス文書館(セビリア)、スペイン国立図書館(マドリード)、フランス国立図書館(パリ)、イベロアメリカ研究所(ベルリン)において、史料ならびに文献調査を実施した。インディアス文書館には、アルゼンチン、ブエノスアイレスの国立文書館が所蔵するイエズス会グアラニ布教区住民名簿の欠損部分(特に18世紀前半)が収められており、この在外研究期間中に、アルゼンチンの史料の不足分を補うことができた。また、その他の機関においては、住民名簿の分析を補完する諸文献、具体的には、グアラニ先住民の在来の首長制度についてイエズス会宣教師が17世紀前半に言及した史料や、17世紀後半に軍事役職に就いていたグアラニに言及した、19世紀中葉の刊行史料を入手することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、スペイン高等科学研究院イスパノアメリカ研究部門にて、スペイン語による研究発表「グアラニ先住民名簿の動態分析-イエズス会士の集住政策と社会文化的インパクト-」を行った(2013年12月4日)。この発表では、広大な南米大陸を効率的に植民地化するためにスペインが実践したレドゥクシオンと呼ばれる集住政策を論じた。集住政策は、その進展の過程で、相当のインパクトを先住民社会・文化に与えた。本発表では、ラプラタ地域のグアラニ語系先住民に対してイエズス会宣教師により実践された集住政策の帰結を論じた。 また2014年2月19日には、セビリア大学のアメリカ史部門主催の学術セミナーにて、「イエズス会士の集住政策と先住民リーダーシップの変容-グアラニ先住民軍事組織の事例-」というスペイン語による研究発表を行った。この発表は、拙稿「スペイン統治期ラプラタ地域のイエズス会布教区における先住民社会組織-パルシアリダと軍事組織を中心に-」(『ラテンアメリカ研究年報』第30号、2010年6月)を基礎とするものである。拙稿の脱稿時点では、画一的な数字に基づくグアラニ先住民軍事組織の編成が、18世紀後半には常態化していたことは確認できたものの、その起源については、史料の不足により明らかではなかった。しかしその後の研究を経て、こうした編成の仕方が17世紀からグアラニ先住民に対して実践されていたことが明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までのところ、主に17世紀後半に作成された名簿のデータ入力が進行中であり、これと、同時期の軍事役職者を務めたグアラニ先住民の名簿を照らし合わせることにより、軍事役職者がどのような首長の支配下におかれていたのかといった問題をグラフ化し、視覚的に解明できる。 「現在までの達成度」の箇所で述べた2013年12月4日に行った研究発表の成果は、スペイン語論文「イエズス会のグアラニ布教区における集住政策の社会文化的帰結-カシカスゴの変容と新アイデンティティの誕生」として、『先住民集住政策を論じる-スペイン王国支配地におけるそのインパクト-』というスペイン語論集の中の一論文として、2014年度中にペルー・カトリック大学出版局から出版の予定である。 また、イエズス会グアラニ布教区住民名簿に関して、18世紀中葉のグアラニ戦争後にポルトガル領ブラジルに捕虜として連行されたグアラニに関する名簿がブラジル、リオグランデドスル州のポルトアレグレに、18世紀後半のスペイン領全域からのイエズス会士の追放以後に南部に移住したグアラニにまつわる名簿がウルグアイのドゥラスノに所蔵されていることが、先行研究を通じてわかっている。これの調査、収集も、現在進行中の名簿の分析とあわせて実施する。
|