研究課題
本年度は本科研の最終年度であり、論文の執筆に力点をおき、2本のスペイン語論文をまとめた。1本目は「イエズス会グアラニ布教区における集住政策の社会文化的作用」(Efectos socioculturales de la politica de reduccion en las misiones jesuitico-guaranies)である。ペルー・カトリック大学より2016年度中に出版予定である。本稿では、布教区編入以前のグアラニの在来の社会組織とカシカスゴとの関連をまず論じた。(1)編入以前のカシケの支配権は、家、村、領域など、様々なレベルに及んでいた。しかし編入以後、その支配権は家に限定され、このレベルの人的まとまりがイエズス会士によりカシカスゴと同定された。(2)次に、複数のカシカスゴがまとまってバリオと呼ばれる居住区域が布教区内に存在したことを指摘した。2本目は、「グアラニ先住民名簿(1656-1801)」(Los padrones de indios guaranies (1656-1801))である。現在アルゼンチンの学術雑誌『スルアンディーノ・モノグラフィコ』(Surandino Monografico)編集委員会が査読中である。本稿では、主にコンセプシオン布教区住民名簿の分析結果をもとに、(1)住民名簿におけるカシカスゴの登場順序がそれぞれの社会的威信の高さを視覚的に表していたこと、(2)コンセプシオンの元住民を主体に17世紀後半に新設された布教区サン・フアンでは、元々コンセプシオンに存在していた一つのカシカスゴがサン・フアンに移る際に複数に分裂して定着したこと、(3)カシカスゴの社会的威信は布教区内での所属バリオに対応していたが、下位バリオに属するカシカスゴから布教区内での重職に相当する軍事役職に就くグアラニが輩出されていたことが珍しくなく、この事実は、カシカスゴ同士の権力バランスを保とうとするイエズス会士の政策の表れである可能性を指摘した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Akira Saito y Claudia Rosas Lauro (eds.) Las reducciones indigenas en debate: su impacto en los dominios de la monarquia hispanica: Lima, Pontificia Universidad Catolica de Peru
巻: N/A ページ: TBD