研究課題
今年度は、アメリカ合衆国でこれまでの成果公刊の準備をおこなうとともに、日本に海外研究協力者を招いて共同調査と分析作業を実施した。日米韓におけるこれまでの研究を比較の観点から検証し直すため、オランダとデンマークの各博物館で聴き取りおよび参与観察にもとづく現地調査をおこなった。今年度に特に着目したのは、博物館職員の職業倫理(work ethic)と展示活動の相互関係である。組織社会学や組織心理学で主に計量的手法で論じられる職業倫理という概念は、一般社会でしばしば公正な働き方への意識と誤解されるが、むしろわが国では「働きがい」と言い換えうるものである。研究職員以外も含めた博物館職員が日常業務と職場環境に賃金以外の価値を見出すことと、博物館展示の質がどう関係するのか、海外研究協力者たちと調査・研究を進めた。また本研究は、博物館展示の構築過程を明らかにするという目的のため、特定の博物館の内情、特に人間関係や人事規約といった事項を扱わざるをえない。そうした事項を含む研究成果を公開するためには、関係する個人を匿名にするという社会文化人類学の古典的な手法による人権擁護法に加え、博物館経営に不利益を与えない努力も必要となる。本年度は、昨年度までに完了した研究内容について、この点をさらに慎重に検討した。これらにより、これまでの成果の一部を、海外研究協力者たちとの国際共著という形で雑誌論文として投稿し、掲載された。その他の雑誌論文は、本事業の期間内に掲載が決定しなかったが、本事業によって生まれた海外研究協力者たちとの協働関係をもとに、それらの公刊作業も進めている。また、韓国・朝鮮文化をいかに表象すべきかという課題の成果を国際的に還元するため、米国の学会で発表し、韓国の大学で講演をおこなった。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Bulletin of National Museum of Ethnology
巻: 42(4) ページ: 1-14
International Joint Meeting of the Association of Japanology in East Asia, the Association of North-east Asian Culture & Nihon Bungei Kenkyukai
巻: - ページ: 22-28
Global Anthropology & Anthropology of Migration / Diaspora
巻: - ページ: 221-230