2014年8月から9月にかけて、エジプト・アコリス遺跡の発掘調査に参加し、皮革工房址の遺構調査及び出土遺物の研究を行った。一昨年度(2013年)の7月に起こった政変により、現地の治安が不安定になったこともあり、遺跡の盗掘も散見され、皮革工房址も日乾レンガ壁や石列が崩されるなどの被害が見られた。幸い、調査研究に大きな支障はなく、遂行できた。 皮革工房址には、作業工人の持ち場を示す、日乾レンガで囲まれた区画があるが、そのうちの複数で遺構の最終面、つまり操業開始時の層位までの調査を終えることができた。操業開始時の層位まで発掘調査を終えることができ、皮革工房の操業面が時代とともに拡張し、ある時期になって、工人の持ち場を示す区画が設定されたことが明らかとなった。また、工房の操業規模の拡張に合わせ、皮革製品の製作数も大幅に増えていったことが、出土遺物からも明らかとなった。 また、近現代のエジプトでの皮革産業について、情報収集を進めるとともに、カイロ市内にて現代のエジプトの皮革工場の踏査を実施した。しかし、完全に機械化されており、使用する鞣剤も現代的なものとなっていたため、本研究目的である古代の皮革技術の復元には参考となる点が少なかった。 2014年6月の日本西アジア考古学会第19回大会において(於・鎌倉女子大学)、2013年に実施したガーナでの調査内容について、口頭発表およびポスター発表による成果公開を行った。本年度の調査については、2015年3月の日本西アジア考古学会第22回西アジア発掘調査報告会で、一部の成果について触れている。
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