研究概要 |
本研究の目的は、唾液腺腫瘍において細胞診の診断精度をあげて治療選択および予後予測に役立てることにある。耳下腺腫瘍においては術前に穿刺吸引細胞診を実施するのが通常であるが、これまでの検討では正診率は71.2%で、小唾液腺の腺様嚢胞癌の症例に限ると更に低く30%となる。唾液腺腫瘍では、ときに良性、悪性が鑑別に挙がり、診断困難な例が少なくない。組織診断に際しては免疫染色が必須であり、最近では融合遺伝子の検索が診断確定および予後予測のうえで重要な意味を持ちはじめている。細胞診においては形態学的な検索が主流であるが、免疫染色や融合遺伝子の検索システムを導入することにより、診断精度が上がることが予測される。 本年度は唾液腺癌病理組織(10%ホルマリン固定/パラフィン包埋組織)を用い、融合遺伝子のスクリーニングを主に行った。組織マイクロアレイ(Tissue Microarray, TMA)を予定のおよそ半数(96例)で作成した。既知の融合遺伝子(CTNNB1-PLAG1, LIFR-PLAG1, NFIB-HMGA2, FHIT-HMGA2, WIF1-HMGA2, CRTC1-MAML2, CRTC2-MAML2, CRTC3-MAML2, EWSR1-POU5F1, NTRK3-ETV6, EML4-ALK)について、FISH法を実施した。現在は腫瘍細胞全体におけるFISH法での陽性細胞の割合や分布を検証している。本年は細胞診の形態学的な検討のみでは限界があるということ、細胞診での免疫染色が診断上有用であった症例を報告した。
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