研究実績の概要 |
ALK融合遺伝子においては免疫染色法およびFISH法がすでに汎用されているが、RET, ROS1融合遺伝子は、これらの野生型キナーゼがある程度バックグラウンドで発現しているため、免疫染色による診断が困難である。加えて、FISHに関しても、我々の経験上ALK融合遺伝子よりも困難である。すなわち、RET, ROS1融合遺伝子については実用的な診断法がない。また、FISHや免疫染色などの病理組織学的なアプローチによりスクリーニングされた転座候補症例のうち、RACE法やinverse-RT-PCR法といったconventionalな方法では融合遺伝子同定に至らないケースが多く実在する。 そこで、A) 既知の融合遺伝子の実用的な診断法の開発ないしバイオマーカーの同定、B) 融合遺伝子探索システムにおける新規融合遺伝子同定効率の向上を目指し、 A) 肺癌融合遺伝子陽性症例62例(ALK陽性例37例、ROS1陽性例12例、RET陽性例13例)とEGFR変異陽性症例20例に、これら4種の異常すべてが陰性である8例を加え、Human Genome U133 Plus 2.0にて遺伝子発現プロファイルを取得した。得られたデータに対し、融合遺伝子陽性症例群とEGFR変異陽性症例群でWelchのt検定とQ-value法による多重検定補正を行い、Q値0.01以下かつ発現差が2倍以上ある遺伝子を抽出した。 B) 肺癌、大腸癌、婦人科癌など複数のがん種に対し、合わせて40例のRNA capture sequenceを行った。続いて、臨床での実用化を志向し、肺癌で頻出する遺伝子変異に特化したcustom probeを作成して、既知のALK, ROS1, RET融合遺伝子陽性症例8例とEGFR, KRAS変異陽性症例8例に対しRNA capture sequenceを行った。
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