研究課題/領域番号 |
25871080
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
矢和多 智 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学, 研究員 (90455246)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 忌避学習 / 大脳基底核 / 側坐核 / ドーパミン / 神経伝達 |
研究概要 |
能動的忌避学習における線条体経路特異的役割を解明するために、可逆的神経伝達阻止法(Reversible Neurotransmission Blockade ; RNB法)を用いた。RNB法は、破傷風菌毒素蛋白を線条体の直接路細胞または間接路細胞に特異的に発現させ、神経伝達を阻害することができる。側坐核(腹側線条体)の直接路細胞を伝達遮断することで、能動的忌避学習が阻害されることが分かった。一方、間接路を遮断した場合、学習への影響は観察されなかった。 続いて直接路細胞において、どのようなシグナル伝達が重要であるかを調べるために、生体薬理工学法を用いた。大脳基底核神経回路では両側回路が同時に障害された場合にのみ、個体レベルでの異常が表出することが多い。そのため、片側線条体をRNB法により伝達遮断し、他側に薬剤を投与した場合、投与薬剤が遮断回路において機能している場合に限り、その影響が観察できる。片側側坐核の直接路遮断と、他方側坐核へのドーパミンD1受容体阻害剤(SCH23390)投与を組み合わせた場合、能動的忌避学習が阻害された。しかしながら、D1受容体作用薬(SKF81297)、D2受容体作用薬(quinpirole)投与との組み合わせでは、学習に影響がないことが分かった。 これらの結果より、能動的忌避学習には、側坐核の直接路細胞においてD1受容体が活性化されることが重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画では25年度において、1)RNB法を用いた能動的忌避学習に関わる線条体回路の解析、2)生体薬理工学法による神経回路と伝達機構の解析を予定していた。 1)RNB法を用い、腹側線条体(側坐核)の直接路が、能動的忌避学習に重要であることを明らかにした。 2)生体薬理工学法を用い、片側側坐核の直接路遮断と、他方へのドーパミンD1受容体阻害薬 (SCH23390) 投与を組み合わせた場合、能動的忌避学習が阻害されることが分かった。一方、D1受容体作用薬(SKF81297)、D2受容体作用薬(quinpirole)、CB1受容体阻害剤(ACEA)、アデノシンA2a受容体阻害剤(SCH58261)の投与は学習に影響を与えないことが明らかになった。 以上の結果は、概ね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
側坐核のドーパミンは腹側被蓋野のドーパミン細胞に由来するが、この細胞は、定常的な低頻度発火と、一過的な高頻度発火を示すことが知られている。高頻度発火は正の報酬予測誤差(予想よりも良い状況、突然の報酬刺激)により引き起こされ、逆に低頻度発火は負の報酬予測誤差(予想よりも悪い状況、突然の嫌悪刺激)により停止すると考えられている。D1受容体はドーパミンとの親和性が比較的低く、低頻度発火では活性化されずに、高頻度発火に反応すると考えられる。逆に親和性の高いD2受容体は低頻度発火により定常的に活性化状態にあり、低頻度発火の停止により不活性化すると考えられている。能動的忌避学習においてD1受容体の活性化が重要であるということは、すなわちドーパミン細胞の一過的高頻度発火がこの学習に重要であることを示唆する。これまでの研究では嫌悪刺激によりドーパミン細胞は活動減少すると考えられており、忌避学習においてどのようにドーパミン細胞の活動上昇が関わるのか分かっていない。 そこで、ドーパミンの動態をリアルタイムに計測することで、学習のどのタイミングで活動上昇が引き起こされるのかを調べる。具体的には、電気生理学的手法またはカルシウムイメージング法によるドーパミン細胞の活動記録、ボルタメトリー法によるドーパミン濃度測定を検討している。 また、光刺激依存的に対象細胞の活動を亢進させるチャネルロドプシン、逆に抑制するアーチロドプシンを用い、ドーパミン細胞の活動を外部から制御する。これらの制御がどのように学習へ影響を及ぼすかを観察することで、どのような神経活動が学習に関与しているかを調べる。
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