研究課題/領域番号 |
25871083
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人レーザー技術総合研究所 |
研究代表者 |
染川 智弘 公益財団法人レーザー技術総合研究所, レーザープロセス研究チーム, 副主任研究員 (00508442)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ラマン / 海底資源探査 / 環境影響評価 / ライダー |
研究概要 |
日本の領海・排他的経済水域は国土面積に比べて12倍程度と広く、海底鉱物資源・メタンハイドレート掘削、CO2を海底地層に圧入して大規模削減を目指すCCS等の有効な海底利用が計画されている。海底開発では資源探査手法だけでなく海洋生態系・環境への影響評価が必要とされているが、現状の採取・採水測定では頻度とエリアに限度があり、海中での効率的なモニタリング手法の開発が必要である。そこで、海底を効率よくモニタリングするために、レーザーを用いたリモートセンシング技術であるライダーを利用した海中モニタリング技術を開発している。現有の技術シーズである水溶存ガスラマンライダー技術を海中で応用するために、平成25年度ではCO2ガスを用いて海底環境における測定の問題点の抽出を行った。 (1)pH変化におけるラマン信号の評価 pHが8である海水では溶存CO2は主にHCO3-の状態で存在するが、CO2ガスが溶存すると平衡が酸性に進むため、pHによって水溶存CO2は溶存状態が変化することが予想される。そこで、模擬海水にCO2ガスを溶存させラマン信号を取得した。海水での~60 mmol/kgの溶存CO2ガスではCO2ラマンスペクトルに特徴的な差は見られず、水中CO2ラマンライダーの観測波長を決定した。 (2)気泡でのモニタリング検証 水中でのガス湧出は溶存水として湧出(ジワジワ)、気泡として湧出(ブクブク)の2通りが想定されている。これまでは水にCO2ガスが溶存した溶存水での検出を検討してきたため、「気泡として湧出」への本手法の適用可能性を検討した。高圧チャンバー内にエアポンプを設置し、CO2ガスを底部からバブリングした。従来の溶存水ではCO2と水のラマン信号強度比から溶存CO2ガスの濃度を評価していたが、気泡では気泡の流量に依存することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では海底環境における本手法の応用可能性の検討として、海水での影響評価、気泡湧出時の検知可能性の評価を行った。これまでの水に溶存させたCO2ガスと同様に海水でも評価が可能であり、ラマンスペクトル測定を阻害する問題点がないことがわかった。また、気泡湧出時においても溶存水と同様にラマンスペクトルの取得が可能であるが、溶存ガス濃度の評価には同時に気泡の流量等の他のパラメーターの取得が必要であることがわかった。研究計画通り順調に進展し、得られた結果より本年度の研究の目的であった本手法の海底環境への応用可能性を示せた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、水溶存CO2のラマンライダーシステムを構築し、ライダーシステムの性能から本提案手法の応用可能性を検討する。 (1)透過型回折格子を利用した小型のライダー分光システムの構築と検出限界の検討 平成25年度の検討で決定したパラメーターを基に、フィールド観測を見据えた小型のライダーシステムについて検討する。回折格子で空間的に波長分散された散乱光をリレーレンズでアレイのフォトマルに集光する。CO2濃度を変化させてラマン信号を測定し、ライダー方式の検出限界を検討する。 (2)中空ファイバーを利用した遠隔ライダー計測手法の開発 高出力のレーザーを伝送できる中空ファイバーを利用してレーザーとライダー受光システムを遠隔で結合するライダー計測手法を開発する。レーザー送信と信号の受信は同じレンズで行い、信号の分離には誘電体ミラーを用いる。水のラマン信号を測定することで、構築したシステムの性能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に得られた実験結果から、平成26年度に使用する光学素子等を再検討することが有意義であると判断したため、一部費用を平成26年度に繰り越した。 平成26年度の研究計画である水溶存CO2のラマンライダーシステムを構築するための光学素子等の購入に使用する予定である。
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