日本の領海・排他的経済水域は国土面積に比べて12倍程度と広く、海底鉱物資源・メタンハイドレート掘削、CO2を海底地層に圧入して大規模削減を目指すCCS等の有効な海底利用が計画されている。海底開発では資源探査手法だけでなく海洋生態系・環境への影響評価が必要とされているが、現状の採取・採水測定では頻度とエリアに限度があり、海中での効率的なモニタリング手法の開発が必要である。そこで、海底を効率よくモニタリングするために、ラマンライダーを利用した海中モニタリング技術を開発している。 H25年度はラマン測定への海水の影響評価、CO2気泡が共存する環境でのCO2濃度の評価手法の検討を行った。海水からはSO42-由来のラマン信号が観測されたが、水、CO2のラマン信号とは波長が異なり、ライダー観測に影響を与えないことがわかった。次に、高圧チャンバー内にエアポンプを設置し、CO2ガスを底部からバブリングすることで、CO2気泡が共存する環境でのラマン測定を行った。溶存水ではCO2と水のラマン信号強度比からCO2ガス濃度を評価していたが、CO2気泡が共存する環境では気泡流量等の別のパラメータの取得も必要であることがわかった。 H26年度では、フィールド観測を見据えた小型のライダーシステムについて検討した。回折格子で空間的に波長分散された信号光を32アレイのフォトマルで測定することで、波長間隔1.25 nmでライダー信号を測定できる受光系を作製し、水溶存CO2のラマンスペクトルの取得に成功した。また、高出力のレーザーを伝送できる中空ファイバーを利用したライダー計測手法も検討した。レーザーを中空ファイバーに入れ、元の光路から90°方向に出射させると、透過効率が26%、ビームの広がり角は14倍大きくなるために、中空ファイバーは遠距離のライダー観測には不向きであることがわかった。
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