本研究は、気象条件と建物側からの熱的影響により変化する屋根積雪性状を予測・評価する手法を構築するために、これまで申請者が開発してきた屋根積雪多層熱収支モデルに、雪の特性を考慮し、勾配屋根に対応した融雪水の水分移動モデルを組み込むことで、数値モデルの高度化を図ることを目的としている。平成27年度の研究実績は、以下の通りである。 1.屋根積雪多層熱収支モデルの高度化: 主に雪崩分野で開発されている積雪内部の水分移動モデルに係る既往研究を参考に、融雪水の移動を考慮した数値モデルを作成し、これまで申請者が開発してきた屋根積雪多層熱収支モデルに組み込んだ。昨年度実施した屋根雪の実験室実験の結果を用いて、数値モデルの妥当性を検証したところ、融雪水量の実験値と計算値は概ね一致することを確認した。 2.屋根積雪多層熱収支モデルの構築: 開発した数値モデルの実建物への適用可能性を検証するため、実建物における屋根雪の観測値と計算値を比較した。入力条件(降雪量の計算)をチューニングすることで、屋根上積雪深などの観測値と計算値は概ね一致することを確認し、本研究で開発した数値モデルの実建物への適用可能性を明らかにした。 今後は、本研究で開発した数値モデルにより、積雪地域における建物の屋根積雪性状(積雪深、重量など)を予測することが可能となり、屋根雪荷重による建物の倒壊被害の防止に向けた基礎的知見として活用していく予定である。
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