研究課題
本研究は、霞ヶ浦の懸濁粒子・植物プランクトンに含まれるリンの化合物形態について、核磁気共鳴装置(31P NMR)を用いて分析を行ったものである。31P NMRは、分析の際に、リンを含む有機態の化合物を、定性的・定量的に把握することができる。また、懸濁物中に含まれるリン化合物を把握し、植物プランクトンのバイオマスと比較を行うことで、植物プランクトンの枯死・成長に伴うリンの形態変化を解析することができる。31P NMRを用いた分析方法としては、固体、溶液の2種類があるが、固体NMRは大まかな化合物の結合形態を分析するために用いられる一方で、溶液NMRは、具体的な化合物を把握するために用いられる。近年、リンを核種(31P)とするNMRでは、化合物を抽出した後、それを分析する溶液NMRが使用されている。本研究も、過去の研究に従い、水酸化ナトリウム―EDTA法を用いて分析を行った。本方法は、リンの抽出を行う際に、抽出率等が問題になることもあるが、具体的な化合物を把握するためには近年頻繁に使用されるものであり、霞ヶ浦においても使用実績があるものである。分析を行った結果、リン化合物の抽出率は、約50%程度であった。懸濁物中に含まれるリン化合物としては主に、オルトリン酸(PO4)、核酸態リン(DNA-P、RNA-P)、リン脂質、ピロリン酸などが含まれていた。そのうち有機態リンとしては、DNA-P、RNA-P、リン脂質であったが、その中でもとりわけRNA-Pが有機態リンの約60%と最も多い結果であった。また、RNA-Pは、植物プランクトンのバイオマスとも変動が一致しており、植物プランクトン等の微生物が増加に伴って形成され、逆に枯死すると流出する成分であることが推察された。また、以上の知見をもとに、霞ヶ浦における有機態リンの動態モデルを構築した。
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