研究課題/領域番号 |
25871087
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
河合 徹 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 特別研究員 (30512719)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 残留性有機汚染物質 / 全球多媒体モデル / 生物濃縮 |
研究概要 |
多様な化学物質の内、残留性有機汚染物質(POPs)は広域多媒体に渡って輸送され、かつ生物濃縮性と毒性が高い。このため、地球規模における生物への悪影響が特に懸念されてきた化学汚染物質である。 近年、気候モデルより得られた物理データを用い、POPsの大気-海洋-陸域に渡る循環を詳細に推定する多媒体モデルの開発が進められている。これらのモデルを用いてPOPsの環境媒体中における濃度レベルを推定することは可能となってきている。一方、地球規模において、生態系全般への曝露量を推定できる段階には至っていない。 本研究では、中-高次消費者を含めた海洋生物へのPOPsの生物移行を計算するサブモデルを開発し、我々が開発を進めている全球多媒体モデルFATEに導入する。これを用いて、全栄養段階における海洋水産資源(魚類)へのPOPsの曝露量を地球規模で推定し、さらに、漁業による陸域への輸送量を国別に評価する。 H25年度には、まず、主要な塩素・臭素系POPsにFATEを拡張する。その後、衛星データのみを用いて、中-高次消費者を含めた海洋生物の存在量と生物学的に駆動される炭素循環を推定するサブモデルを開発する。これと既存の生物濃縮モデルをFATEに導入し、POPs(既存、新規、及び候補物質)の全栄養段階にある海洋水産資源への曝露量を推定する。 H26年度には、水産統計データ(漁業海域、国別の漁獲高)を整理する。これと、H25年度に得られた、海洋水産資源への曝露量の推定結果を用い、POPsの漁業による陸域への輸送量(陸域生態系への潜在的な曝露量)を国別に評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」のH25年度の計画に記した、FATEの主要な塩素・臭素系有機汚染物質への拡張と、海洋生物への生物移行に関する全てのモデル開発は完了している。また、H26年度の計画に記した全球水産統計データの整理まで既に行っている。現在、代表的な塩素系のPOPsであるポリ塩化ビフェニル(PCBs)を取り上げ、海洋水産資源への曝露量と漁業による陸域への輸送量の推定を行っているが、この他のPOPs、及びPOPs候補物質を対象とした解析は行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
生物移行に関連する物質固有のモデルパラメーターには大きな不確実性がある。特に、低次から高次消費者への生物濃縮を計算する際に用いるTMF (trophic magnification factor) は結果に及ぼす感度が大きく、情報の不足しているパラメーターである。また、現在モデル検証が行えているのは溶存態と低次消費者(粒子状有機物)中のPCBs濃度のみである。今後はPCBs以外の塩素・臭素系有機汚染物質を対象とした解析を行うとともに、パラメーター(TMF)推定の精緻化と魚類を対象としたモデル検証を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
FATEを用いて多数の物質のシミュレーションを実施するためには巨大な計算機資源(計算機とストレージ)が必要となる。本課題では直接経費の大部分をこのような計算資源の購入に割り当てている。「現在までの達成度」に記したように、本課題で予定しているモデル開発は既に完了しているが、多数の塩素・臭素系有機汚染物質を対象とした解析行える段階に至っていない。 前年度より繰り越した直接経費を用いて、極力早期に申請時に予定していた計算機資源を購入し、PCBs以外の塩素・臭素系POPsと候補物質を対象とした解析を実施する。
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