研究課題/領域番号 |
25871088
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
花岡 創 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 研究員 (40598728)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テリハボク / 海流散布植物 / 遺伝構造 / 遺伝子流動 / 分布変遷 |
研究概要 |
課題実施以前より入手できていた日本および台湾産の試料について、先行的にEST-SSR分析を行った。同分析では、台湾と日本間との間には高い遺伝的分化があること、また、台湾では比較的高い遺伝的多様性が保持されている一方、小笠原諸島では遺伝的多様性が特に低く、先島諸島で中間的であることが明らかとなった。これらの成果はAnnals of Forest Science誌にて公表した。 南太平洋域における試料収集については、フィジー1島、ソロモン2島、バヌアツ2島から合計150点のDNA分析用試料を採取することができ、本研究の遂行に必要な最低限の試料を入手できた。遺伝的分化や分布変遷の評価を実施するためのマーカー開発については、今年度は葉緑体DNA(cpDNA)の一塩基多型(SNP)の探索について取り扱った。多くの被子植物に適用可能な葉緑体DNA増幅用のPCRプライマーを多数設計し、フィジー、台湾、日本産のテリハボクそれぞれ2個体を対象に、long-range PCRによって4~10KbpのcpDNA断片を合計で約60Kbpを増幅し、次世代シーケンサを用いて塩基配列を決定後、変異箇所(SNP)を探索した。本研究では、葉緑体ゲノムの5分の3程度の塩基配列を取得・比較できたと考えられるが、台湾と日本産の個体間では変異は観察されず、フィジー産の個体のみから5つの変異(SNP)が同定された。今後、これらをcpDNAのSNPをマーカーとして解析に用いることが可能になったことに加え、分布のほぼ南限域と北限域に分布する個体間においても、cpDNA上の遺伝的変異は非常に小さいことを明らかにすることができた。本成果については、第61回日本生態学会大会にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 試料の収集とDNA抽出 試料の収集については、目標通りに南太平洋地域からの収集を達成することができた。現在、全てのサンプルからのDNA抽出を実施しているところであり、概ね目標を達成できている。 2)DNAマーカーの開発 cpDNAのSNP探索については、次世代シーケンサを利用した新規的なアプローチに成功し、目的を達成することができた。一方、核DNAのSNP探索については、全サンプルからのDNA抽出が完了した段階で順次実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
核DNAのSNPを探索してマーカー化し、採取した全試料の分析を行う。核DNAのSNP探索にあたっては、近年Rad-sequence法やGenotyping by sequence法などが多く用いられているが、これらの手法は手順が煩雑であることに加え、安定的な結果を得るためには非常に質の高いDNAが求められる。本研究では海外における試料収集に長期間を要し、試料を冷凍保存することができず、試料を乾燥標本として保存した。必ずしも十分な質のDNAが抽出できない可能性があるため、上述の手法は本研究にはあまり適さない可能性があり、代替する手法を検討する必要が出てきた。そこで、より簡便かつDNAの質に頑強な最新の手法であるMig-seq法(陶山ら2014)を取り入れ、核DNA配列の網羅的な取得とSNP探索を行うことを再計画している。SNPを同定後は、各国における遺伝子型頻度等に配慮しながらSNPの選抜およびマーカー化を行い、SNPタイピングシステム(ep1システム;フリューダイム社)を用いて全試料のSNPタイピングを実施する。全試料の遺伝子型が同定されれば、遺伝的多様性や遺伝的分化等について分析を行うとともに、コアレセント理論を用いた分布変遷過程に関する統計解析を実施し、テリハボクの分布変成経路及びその速度について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次世代シーケンス解析の外部委託を計画していたが、委託予定先の混雑状況から年度中の納品が困難となってしまったため、解析委託を次年度に持ち越し、実施することとした。 当初の予定通り、次世代シーケンス解析関連の費用として使用する予定である。
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