研究課題/領域番号 |
25871089
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
田端 純 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (20391211)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 化学生態 / 害虫管理 / 人為選択 / 嗅覚情報処理 |
研究概要 |
交信撹乱剤は性フェロモンをベースとした安全性の高い農薬である。人工的に合成した性フェロモンを大量に散布して害虫の配偶行動を撹乱・阻害する技術であり、60万ヘクタールを超える農耕地で使用されている。交信撹乱剤の大きなメリットのひとつは、従来の殺虫剤とは異なり、抵抗性が出現しにくいこととされてきた。交信撹乱成分は標的害虫自身の配偶に必要不可欠な物質(性フェロモン)であり、その影響を免れるためには性フェロモンの受容・生産に関わる形質を変化させなくてはならない。しかし、フェロモン・コミュニケーションは配偶行動における最も重要なステップであり、これを変えることは繁殖の失敗に直結する。したがって、そのような変化は短期間では生じ得ないと予想されていたからである。しかし、茶樹の重要害虫チャノコカクモンハマキでは1990年代後半から交信撹乱剤抵抗性の問題が報告されている。これは現時点で唯一の抵抗性事例であり、フェロモン剤のリスクモデルとして注目されている。 本研究では、このハマキガの交信撹乱剤抵抗性系統の触角におけるフェロモン受容体遺伝子を感受性系統(対照系統)と比較し、その変異と交信撹乱剤抵抗性の関係を明らかにすることを目的としたものである。平成25年度はオス成虫の触角上で発現するフェロモン受容体候補遺伝子を含む嗅覚受容体遺伝子群をターゲットとして、次世代シークエンスによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、少なくとも4つの嗅覚受容体遺伝子のリード数に系統間差がみられた。これらの遺伝子がフェロモン成分や交信撹乱成分の受容に関与している可能性がある。 なお、チャノコカクモンハマキの交信撹乱剤として現在使用されている製剤は本研究で対象とした抵抗性系統にも十分作用するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の材料となるハマキガの系統維持、組織の摘出は順調かつ安定して進行している。組織からのRNA抽出やトランスクリプトーム解析も予定通り行うことができた。次年度以降の研究を遂行する基盤を確立することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度のトランスクリプトーム解析で候補として抽出した遺伝子を中心に、さらに詳細な発現量解析や機能解析を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度予算として、リアルタイムPCR装置を購入するための経費を計上していたが、予定機器(Illumina社:Eco Real Time PCR System)が製造中止となったため、購入を見合わせた。 次年度使用額については、申請書に記載した用途に加え、カスタムTALENの追加作成等に活用する。平成25年度に購入できなかったリアルタイムPCR装置は、申請者の所属する研究所の共用機器を利用する。
|