H27年度の目的は、1.実際のため池で観測された地震動および堤体の弾性波速度変化データを標準劣化モデルと対応させるため、地震動のような不規則荷重を与える繰返し載荷試験を実施すること、2.研究期間内に蓄積した知見を整理し、ため池堤体材料の物性および密度から繰返し載荷に伴う弾性波速度変化を推定する標準劣化モデルを作成する、であった。 不規則荷重を与える繰返し載荷試験については、阪神・淡路大震災および東北地方太平洋沖地震で観測された不規則な地震波形を対象に繰返し載荷試験を実施した。sin波形を用いた試験結果(H26年度に実施)に累積損傷度理論を適用して推定した地震時の弾性波速度変化と、実際に不規則荷重を与えた際の弾性波速度変化を比較したところ、繰返し載荷回数の累積に伴う弾性波速度の変化傾向は類似したものとなった。しかしながら、推定値と実測値の値そのものを比較すると、両者には差が残されたため精度の高い推定のためにはさらなる検討が必要である。 標準劣化モデルの作成については、繰返し載荷に伴う弾性波速度の変化が当初想定していたよりも複雑であったため、ため池堤体材料の物性および密度に応じて類型化し、標準劣化モデルを作成するには至らなかった。しかしながら、物性と密度に応じた弾性波速度の変化に関する基本的な傾向については把握することができたため、今後のデータの蓄積と分析により標準劣化モデルを作成できるものと考えている。
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