26年度に引き続き地盤沈下にともなう海水浸透や排水機場復旧の遅れが生じている東日本大震災津波被災農地において、25年度に設置した地下水観測孔を活用し,灌漑期、および非灌漑期を通じた地下水塩分濃度の変化を、連続モニタリングおよび,定期的な現地計測により把握した. 開発した現地の塩水対策手法である、圃場内外の水田や貯水池から地下に淡水を供給することで海側からの塩水侵入を抑制したうえで、畑エリアのみ強制的に暗渠を通じてポンプで排水を行う塩水浸入抑制と農地生産性を兼ねた圃場貯水-ブロック排水手法の現地への導入に向けて、25年度~26年度に作成した非定常地下水流解析モデルを現地スケールに拡張して陸域での具体的な貯水域,排水域の配置が地下塩水侵入状況に及ぼす影響を明らかにした。 省電力での遠隔操作が可能な自動制御機能を有する排水路を対象とした樹脂軽量型のラジアルゲートを開発し、H26年度に作成したSCADA(監視制御データ収集)システムの実験模型に組み込み、遠隔操作性と自動制御性を確認した。さらに、地下からの海水浸透による塩水進入に対する排水枡を通じた淡水供給による制御機能を追加し、塩害防止機能を確認した。 これら開発した機能を実装したSCADAシステムの小型実験模型を用い、データ収集機能、塩水・排水の制御機能、HMI画面での制御状況の可視化機能の試験を実施し、システムの有効性を明らかにした。 これらの研究期間全体を通じて開発した手法は,地盤沈下後に上昇した常時地下水位を畑地帯のみ下げることで汎用農地化を行えると同時に、沿岸域の地盤沈下地域の塩水浸透を抑制できるため、今後の津波被災後農地の復旧手法として適用が期待できる。
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