研究課題/領域番号 |
25871102
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
芳賀 聡 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所草地管理研究領域, 研究員 (90442748)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウシ乳腺上皮細胞 / ビタミンE / 周産期疾病 / 初乳 / 乳腺バイオプシー |
研究概要 |
【目的】乳腺は妊娠末期から血中ビタミンE(VE)を初乳へ多量移行させる。母体はVEを多量に失う結果、周産期疾病の発症リスクが高まる。申請者はウシ乳腺において、VE特異的輸送タンパクαTTPの発現を新規に見出した。このαTTPの乳腺における発現特性とVE移行能の関連性を精査することにより、リスクファクターとなるVE乳腺移行メカニズムの亢進機序を解明することを目的とした。【成果】1,Transwell Insertと経上皮電気抵抗(TEER)測定装置を用いたウシ乳腺上皮細胞(BMEC)培養条件下で、VEを想定した蛍光物質Fluoresceinを用いた細胞間隙透過実験により物理的に有効なバリア機能を示すTEER値を明らかにし、intactな単層バリア機能と極性を併せ持つin vitro ウシ乳腺モデルの構築に成功した。2,内分泌ホルモン添加実験において、平板培養と構築した培養乳腺モデルを比較すると、ホルモン刺激に対するαTTP発現の反応性が明らかに異なっており、極性の重要性が示唆された他、αTTP発現は妊娠末期に増加するEstradiolの直接的な影響を強く受けることが明らかとなった。3,予算計上通りに自動生検装置を整備し、かつ当研究所の専門スタッフによるバイオプシーチームを結成することで、乳牛からの低侵襲的、連続的かつ高精度な乳腺組織サンプリング法および周産期試験法の確立に成功した。【意義と重要性】新たに構築したin vitro ウシ乳腺モデルにより、in vivoに近い状態において乳腺に発現するαTTPが内分泌制御を受けるという新知見を得られた。また今回確立した乳腺バイオプシーを用いた周産期試験法は国内での実施例がほとんどなく、この実験から得られるデータは周産期疾病発症の機序のみならず、哺乳類における初乳合成機序を解き明かす上で極めて有意義なものになると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
intactな単層バリア機能と極性を併せ持つin vitroウシ乳腺モデルの構築に成功し、有効な単層バリア機能を示すTEER値を決定した。また前倒しで実施した内分泌ホルモン添加実験により、BMECにおけるαTTP発現の内分泌制御に関するデータも予定より早く得られている。年度を跨いで実施中であるRNAi法を用いたαTTPの機能解析や乳腺バイオプシーを用いた周産期試験も当初の予定通り進行していることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は以下の通りである。1,BMECのαTTP発現をRNAi法により抑制し、本年度新規構築した培養モデルを駆使してVE移行能を解析し、乳腺移行量の低下が起こるかどうかについて調べる。これにより、VE乳腺移行におけるαTTPの機能的役割を明らかにできる。2,同様に本年度確立した乳腺バイオプシーを用いた周産期試験を継続して実施し、十分な供試頭数を確保した上で、周産期の乳腺組織におけるαTTP発現特性に関するデータを収集する。以上、in vitro実験とin vivo実験を両立させ、周産期疾病のリスクファクターとなるVE乳腺移行メカニズムの亢進機序の解明に向けた基礎的知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
入札制度導入による業者間の価格競争もあり、本年度購入した生検装置をはじめ高額試薬についても予定額より低価格で購入可能となった。また、業者が行う低価格キャンペーンを積極的に活用して試薬等を購入し、コスト削減に努めたことで、研究の効率性を高めることに成功した。 予定していた次年度の研究予算は、申請した研究計画を遂行するための試薬・理化学機器の購入に使用し、予定通りの研究を推進する。そして、積極的なコスト削減により生じた繰越金は、本年度得られた結果を基にした更なる実験仮説を検証する発展的な研究に用いる試薬・理化学機器の購入に使用し、当初の研究達成度を上回る結果を出し、より高い業績を得たいと考えている。
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