農業用パイプは大きな地震を受けると、曲管周辺で継手の離脱の被害が発生することが多い。この原因として、曲管にはスラスト力が作用し、通常時は、曲管背面の土圧により抵抗できるが、地震時にはその抵抗力が減少することなどが挙げられる。そこで、地震時の地盤のスラスト抵抗力を明らかにすることを目的に、模型実験を実施した。 鋼製の土槽(長さ2m、高さ0.8m、奥行0.4m)に、曲管を模擬したプレート(高さ0.1m×幅0.4m)を地盤内に埋設し、プレートにスラスト力を想定した一定荷重を与えた状態で、地震動を与える振動実験を実施した。なお、地盤は4種類(密詰め珪砂、緩詰め珪砂、砕石、固化処理土)を用いた。 実験の結果、以下のこと等が分かった。①砂の地震時のスラスト抵抗力は密度により大きく異なる。静的な砂のスラスト抵抗力の80%のスラスト力をプレートに作用させた場合、800gal加振時に、密詰めの砂のプレートの変位量は、緩詰めの場合の16%であった。また、静的なスラスト抵抗力の1/2のスラスト力でも、プレートは変位した。②加振中はプレートが変位し続け、最終的な移動量は加振時間が長いほど大きい。振動により砂が変位している間は、スラスト抵抗力が低下するためと考えられる。地震が長いほど、パイプの変位量が大きくなると思われる。③砕石の静的なスラスト抵抗力は砂と同程度であった。地震時には、砂と同様に、静的なスラスト抵抗力以下のスラスト力で、プレートは変位した。静的なスラスト抵抗力の80%のスラスト力で、800gal加振時に24mm変位した。④固化処理土は、スラスト抵抗力が極めて高かった。砂のスラスト抵抗力の2.5倍のスラスト力を作用させた場合でも、静的な状態で変位が生じず、加振時においても、プレートは変位しなかった。粘性があるため、振動に強く、地震時にもスラスト抵抗力は大幅に低下しないことが分かった。
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