研究実績の概要 |
ブタ精巣を免疫組織科学的的に観察することによってPGP9.5がブタの精子幹細胞のマーカーとなりうること、また、酵素処理や溶血処理を用いてブタ精巣からの効率的な細胞単離が可能であることなどが昨年度までの研究によって明らかとなった。本年度はこれまでの成果を踏まえ、PGP9.5を指標としてブタ精子幹細胞の単離・濃縮法の開発に取り組んだ。発育段階の異なるブタの精巣(生後1,2,3,4,5および6ヶ月齢)を実験材料としてブタ精子幹細胞の濃縮を試みた結果、いずれの発育段階の精巣を用いても90%程度の生存率で細胞が回収可能であった。その一方、単位重量あたりの回収細胞数は造成後の精巣(4ヶ月齢以上)より造成前の精巣(3ヶ月齢以上)が多いことが分かった。また、酵素処理直後の精巣細胞のうちPGP9.5陽性細胞は0.5%以下であったが、percoll密度遠心勾配法およびdifferential plating法を用いることでPGP9.5陽性細胞の割合は3%程度まで高められることが明らかとなった。以上の方法によってブタの精子幹細胞の濃縮が可能であることが示されたものの、総回収細胞のうちの精子幹細胞の割合が3%程度と、依然としてその濃縮精度は低いと判断せざる得ない。マウスなどの他の哺乳類を用いた研究では、細胞表面抗原を指標としてFACS、MACS等セルソーターを用いてより濃縮効率を高めることが可能であるとの報告例がある。本研究課題は本年度をもって終了するが、今後ブタを含めた家畜の精子幹細胞の利用を目的とした研究の展開を考えれば、濃縮効率を改善する方法を考案する必要がある。
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