研究課題/領域番号 |
25871112
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
下田 真吾 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 連携ユニットリーダー (20415186)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Tacit learning / 義手 / 運動学習 / 環境適応 |
研究概要 |
運動学習には,1. Cognitive Stage,2. Associative Stage,3. Autonomous Stageの3つのステージがあると言われている.Cognitive Stageとは運動の目的や手法を本などから学ぶステージであり,Associative Stageとは教えられた運動を試行錯誤の末に獲得する段階である.この2つの段階では学習が主に意図的に進行するのに対し, Autonomous Stageは試行錯誤の末に生まれた行動を,身体や環境に適応した洗練された行動へと変化させる,いわゆるコツの獲得や慣れに相当する段階であり,主に無意識下で進行する.これまでロボット学習則として提案されているものは主にAssociative Stageに相当するものであり,生物の慣れに相当する学習則はほとんど提案されていない.またこのことがロボットが自然環境において有効な行動を取ることができない理由の一つである. 我々はこれまでに,慣れを人工物制御に応用するため,生物制御の特徴に基づいた学習法であるTacit learningを提案してきた.Tacit learningとは,環境入力に対する反射的な行動と,環境に依存しない本能的な行動目標を事前に与え,その本能的な動作を通じて環境と相互作用することでその情報を取り込みながら適応的な行動を獲得していく学習法である.これまでに多自由度マニピュレータの姿勢制御やヒューマノイドロボットの歩行動作などを,ロボットモデルを用いることなく実環境での行動を通じて獲得することに成功している.本年度は,Tacit learningを義手の制御に応用するための基礎的な制御アルゴリズムの検討を行った.義手の制御では人の動きさらにその個性を環境の変動ととらえ,義手の手首の動きを残存する肩の動きに適応させるための制御則の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
義手をTacit learningにより制御するための基礎的な制御アルゴリズムが完成し,健常者実験によりその有効性を確認することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した制御アルゴリズムを用いて臨床実験を進めていく予定である.臨床試験のための,実際に腕をなくされている方に装着可能な義手を設計する必要があり,そのインターフェースが大きな課題である.また残存する肩肘の動作を計測する手法についても,実際の患者さんに対応するには計測が可能であるだけでなく,装着が容易である必要があり,センサの開発も合わせて進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
制御系の開発が非常にスムーズに進み,プロトタイプの開発費用を節約することができたためH25年度の予算に残額が生じた. H26の臨床試験用の義手の開発において,患者さんの装着しやすさを考慮した開発に充てていく予定である.
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