本研究は主に以下の項目を中心に進めている。 1) 3次元1分子感度顕微鏡の開発 研究実施計画の通り、顕微鏡開発の専門家である谷口氏と協力し、生細胞内の蛍光蛋白質を1分子感度で観察できる高感度蛍光顕微鏡の開発を行った。ヒト由来培養細胞や出芽酵母等のそれぞれの試料への最適化等を行った。構造体に結合した状態の標的蛋白質の定量はすでに可能である。 2) 出芽酵母を用いた1分子感度での蛋白質発現の検出系と細胞種の構築 出芽酵母は、強い自家蛍光を持ち、特に液胞部分の自家蛍光が強い。そこで、定量性の高いレポーター遺伝子として、細胞膜に局在しブラウン運動しない遺伝子に蛍光蛋白質を融合したものを用いた。これをGAL1遺伝子座に挿入した細胞株を作製し、ガラクトース誘導により遺伝子発現の1分子感度経時測定を行った。その結果、個々の蛋白質の輝点をはっきりと観察でき、高い自家蛍光の影響を最小限に抑えることに成功した。続いて、非常に弱いガラクトース誘導を行い、1個のmRNAから生じる蛋白質発現を観察した。GAL1野生型と人工的な3’UTRに由来する蛋白質発現バーストの違いを観察することに成功した。 3) ヒト培養細胞を用いた1分子感度での蛋白質の検出を行うためのレポーター遺伝子を持つ細胞株の樹立 ヒト培養細胞でも出芽酵母と同様に定量性の高いレポーター遺伝子として蛍光蛋白質を融合した微小管結合蛋白質を用いた。この遺伝子に蛍光蛋白質を融合し、薬剤誘導型プロモーターを上流にもつカセットを細胞に導入し、安定細胞株を樹立した。非常に弱く発現誘導し、1分子感度の顕微鏡で観察したところ、1分子の輝点をはっきりと確認することができた。現在さらにSpinach配列を用いた新しいRNAの1分子可視化を試みている。
|