研究課題/領域番号 |
25871123
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平澤 竜太郎 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (10642564)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 初期発生 / H4R3me2s / Prmt5 / Prmt7 |
研究概要 |
ヒストンH4R3me2sの修飾パターンの変化をマウス初期胚において確認するために、特異的な抗体を用いた免疫染色法を用いて確認を行った。ヒストンH4R3me2s修飾はマウス初期発生を通して核内に存在しており、その核内における存在パターンはヘテロクロマチンを構成するヒストンH3K9me2/3とは異なり、染色体上に幅広く存在していると思われる。また、ブラストシスト期においては、内部細胞隗と比較して栄養外胚葉の細胞に強いシグナルが見られる。これは、H4R3me2sが着床前の初期の細胞分化に関与している可能性を示唆している。 また、受精卵においては卵子由来の雌性前核と比べ、精子由来の雄性前核にH4R3me2sの強いシグナルが見られた。これは受精卵における二つの前核の非対称なエピジェネティック修飾のパターンの制御にアルギニン就職が関わっている可能性を示唆している。受精卵前核におけるH4R3me2sの修飾パターンは、様々な前核期ステージで確認したほか、精子由来核を持たない単為発生胚などでも調べており、今後も詳細を詰めていく予定である。 さらに、H4R3me2sの修飾酵素であるヒストンアルギニンメチル化酵素Prmt5、Prmt7のマウス初期胚における発現パターンも同様に確認した。初期発生におけるPrmt5の発現はほぼユビキタスであり、H4R3me2sとの発現パターンの相関性は見られなかった。Pmrt7の発現は卵細胞においては見られるが、受精後の胚においてはほとんどシグナルが見られなかったため、免疫染色以外の他の方法も合わせてその発現パターンを確認していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目にPrmt5およびH4R3me2sの機能的な解析を行う予定であったが、まだ到達していない。また、H4R3me2sのエピゲノム解析も未達のままである。これらの理由として、他に優先すべきプロジェクトがあり、本プロジェクトへ割ける時間が少なかったこと、さらには技術的に難しく解析に時間がかかる実験が多く、予想以上に一つの実験に多くの時間をかけてしまったことなどが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
初期発生におけるヒストンH4R3me2s修飾、およびその修飾酵素であるアルギニンメチル化酵素Prmt5またはPrmt7の機能的な解析を行うために、ノックアウトマウスを用いた解析およびsiRNAなどを用いた遺伝子ノックダウンの系を立ち上げる予定である。Prmt7のノックアウトマウスは既に共同研究者とともに作製しており、Pmrt7の卵細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウスの解析などを行っていく予定である。 また、マウス初期胚を用いたマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析も併せて行っていく予定である。これらノックアウトマウスを指標とした機能解析と、網羅的な遺伝子発現解析を合わせて行っていくことにより、マウス初期胚におけるヒストンアルギニン修飾の機能を遺伝子発現制御という観点から明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた消耗品の使用量があまり多くなかったことと、研究の進捗の遅れにより購入予定だった消耗品(特にマイクロアレイ関係の消耗品)を購入していないことにより、次年度使用額が生じた。 次年度は、大規模な発現解析を行う予定であり、マイクロアレイ関係の消耗品を購入する予定である。
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