研究課題/領域番号 |
25871124
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中西 慶子 国立研究開発法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 協力研究員 (30415252)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞分化 / 小胞体ストレス / 筋発生 / 小胞体膜動態 / カルシウム |
研究実績の概要 |
筋前駆細胞である筋芽細胞が筋蛋白質を発現する筋管細胞に分化する過程で、一過的に小胞体ストレス応答が生じ、これが筋分化過程において重要な役割を果たしていることを私たちは以前報告した。この分化過程に組込まれた生理的小胞体ストレスの発生源が小胞体内カルシウム枯渇であることを強く示唆する結果を得たため、これをイメージングにより可視化することにより直接的に証明し、この内容については昨年度の報告書に記載した。イメージングによる結果から、小胞体内カルシウム枯渇が生じるタイムポイントが筋分化誘導後24時間から48時間の間であることが明らかとなったため、研究計画II-1「筋分化過程における小胞体ストレス応答と筋分化制御系を繋ぐ分子の同定」のためのマイクロアレイ解析を筋分化誘導後36時間の細胞サンプルを用いて行った。同時にコントロールである未処理の細胞と、比較のための2種類の小胞体ストレス誘導剤(小胞体内カルシウム枯渇を誘導するタイプ、小胞体内タンパク質糖鎖修飾を阻害するタイプ)で処理した細胞の解析を行った。その結果、筋分化誘導及び2種類の小胞体ストレス誘導剤とで共通に変化する遺伝子群として、上皮間葉転換関連因子が見出された。上皮間葉転換のマスター遺伝子の一つに関して、筋分化誘導及び小胞体ストレス誘導下においてタンパク質レベルで発現上昇が起こっている事を、細胞免疫染色及びウエスタンブロット法により確認した。また筋分化誘導に特異的な遺伝子変化としては、コレステロール合成経路の遺伝子群の著しい上昇が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年3月末で所属していた研究室が閉鎖になったため、4月より研究室を異動している。異動に伴う様々な準備や変化があり、円滑に研究を継続することが難しい状況であった。
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今後の研究の推進方策 |
筋分化誘導と薬剤による小胞体ストレス誘導との間で共通して発現上昇する遺伝子群として上皮間葉転換関連因子が見出された。小胞体ストレスがどのように筋分化誘導に関わっているのかという、小胞体ストレスの分化への貢献の実体が、上皮間葉転換のスイッチングという役割であるのかどうかを検討する。実際にどの上皮間葉転換関連因子が増減しているのかを、筋分化誘導時及び小胞体ストレス誘導時の細胞サンプルに対してタンパク質発現のレベルで確認を行い、これと筋分化関連分子や、小胞体ストレス応答分子の発現のタイミングとの比較を行う。 また筋分化誘導時特異的な遺伝子発現の変化として、コレステロール合成経路をはじめとした脂質合成関連分子の発現上昇が見られたことから、これが筋分化時に誘導される小胞体内カルシウム枯渇の源になっているのかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費受給期間内に他事業所間での異動が2回生じたことにより、研究の進行に遅れが生じたことが理由で、前々年度から前年度への予算繰越し分が、次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画遂行のための抗体購入に主に当てる。
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