研究実績の概要 |
平成25年度は、黄緑色の超高輝度発光タンパク質Nano-lanternを応用した新たなmRNA発現動態解析法の開発を行い、さらに新たにNano-lanternのそれぞれ約2.3倍と約1.5倍の発光強度を持つシアン色とオレンジ色のNano-lantern色調変異体を開発した。平成26年度はこれら3色のNano-lanternの応用可能性の実証実験として、①複数観察対象の高感度・同時イメージング、②初期胚由来細胞での光毒性・自家蛍光フリーの複数遺伝子発現動態解析、③励起光フリーの多色Ca2+計測法の開発に取り組んだ。 ①ではNano-lanternを用いて複数の細胞内微細構造を同時発光イメージングすることで、従来の蛍光イメージングと遜色ない画像を1秒程度の露光で高感度に得ることに成功した。②では初期胚由来の細胞としてES細胞を用い、3色のNano-lanternを応用することで3種類の遺伝子発現を高感度かつ同時に解析することに成功した。初期胚の細胞では蛍光イメージングに必須な励起光による光毒性や自家蛍光が問題となりやすく、励起光が不要なNano-lanternを用いた発光イメージングにより、光毒性・自家蛍光フリーの複数遺伝子発現の高感度・同時解析法が実現した。③では大阪大学永井健治研究室との共同研究により、Nano-lantern色調変異体を用いたCa2+指示薬の開発に成功し、新たに励起光フリーの多色Ca2+計測法が実現した。本法は今後、光遺伝学などの光操作技術を妨げないCa2+計測法として脳科学研究などへの応用が期待される。 以上の成果は国内外の関連学会・学術論文において発表し(Takai et al., PNAS 2015)、全国紙の各新聞媒体やNHKなどの各種報道機関を通じて一般社会へと発表した。今後は3色のNano-lanternを脊椎動物個体での複数mRNA可視化法に応用し、Ca2+計測法と併用することで、左右軸非対称性形成のシグナル制御機序の解析を引き続き行う予定である。
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