研究課題/領域番号 |
25871131
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
貞包 裕加(堀川) 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (10589039)
|
研究期間 (年度) |
2014-02-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 軟X線発光分光 / 逆ミセル / 多層膜 / ナノ空間中の水 / 水素結合 |
研究実績の概要 |
26年度は研究計画のうちの安定送液のためのセットアップの構築と逆ミセル中・多層膜中の水の水素結合状態研究のための軟X線発光分光測定を行った。用いる窓材の酸化物からのバックグラウンド信号を正確に取り除くことで信頼性の高い、ナノ空間中の水の水素結合状態変化に伴う発光ピークの強度変化を観測することに成功した。 1.逆ミセル中の水 BHDC/水/トルエンにより構成される逆にセルについて測定を行い、ミセルサイズが小さくなるに連れてミセル中に閉じ込められている水の水素結合状態が変化している様子を観測することに成功した。微小空間中の水分子数が少ないことによる信号強度の弱さのため、定量的な解析が行える程度のSN比を得るための追加測定が必要であることが分かった。次年度はこの測定とCTAB/水/CHCl3から構成される逆ミセル中の水の水素結合状態測定を行うことにより、閉じ込めサイズとIce-like状態の存在割合の関係を明らかにしていく。 2.多層膜中の水 3MP/D2O/NaBPh4の混合系で形成される多層膜中の水の電子状態観測を行った。送液ポンプを通った試料を測定にかけない流路作製により、これまで問題となっていた流動場がかかることによる多層膜構造の崩壊を防いだ状態での電子状態測定を行うことができた。その結果、45℃以上で無秩序構造になった状態でも混合系中の水は完全にバルク水と同じ状態に戻る訳ではなく多少のIce-like構造の減少があることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示したように、平成26年度は初年度実施予定であった「安定に送液できるセットアップの構築と逆ミセル中・多層膜中の水の水素結合状態研究」について計画通りの内容を進めることが できており、本年度までの研究内容は研究目的を達成する上でおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
27年度は逆ミセル中の水の電子状態研究の追加測定と取得データのまとめを行う。また次年度の研究計画である圧力変化における水の水素結合状態研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
急な出産に伴い、初年度に計画していた低圧セル作製(~20万)が1年後ろ倒しになったことと予定していた国際会議への参加(~20万)を見送ったために初年度の使用予定額とのずれが生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は所属が山口大学へと異動となったため、研究推進のために毎回SPring-8まで出張して実験を行うことになった。卒論研究生もこの実験に参加するため、次年度では低圧セル作製費(~20万円)と兵庫、山口間の旅費に充てたいと考えている。
|