研究課題
皮膚炎発症と進行のダイナミクスを記述したマルチスケール数理モデルの構築を大目標として掲げ、三年間にわたってミクロ・メゾ・マクロスケール各階層における動態を記述した数理モデルの作成に取り組んでいる。初年度はメゾスコピック系 (表皮細胞間のオートクライン型サイトカイン分泌による細胞間相互作用を記述した確率モデル)の研究を進めた。2年目は、マクロスケールを記述した数理モデル構築と確率シミュレーション研究に専念して研究を進めた。具体的には、表皮の大多数を占める細胞であるケラチノサイトを標的として、炎症反応が表皮組織レベルでどう拡大し、維持されるかに関する数理モデルを構築して解析した。黄色ブドウ球菌など、アトピー性皮膚炎発症時には個体数増大が観察される皮膚常在菌による抗原刺激を想定し、表皮におけるプロテアーゼ活性と細菌に対する免疫応答も組み込んだ数理モデルを構築・解析した。プロテアーゼ活性と免疫応答の相互作用によって、持続的な炎症反応が表皮組織レベルで維持される仕組みをまとめ、ただいま論文として投稿準備中である。最終年度 (3年目) では、ミクロレベルでの皮膚炎関連シグナル伝達ネットワーク数理モデル構築に向けて取得可能な遺伝子発現データと、注目すべきシグナル伝達系の選定を行った。ミクロレベルのシグナル伝達ネットワーク数理モデルでは、ネットワーク上の常微分方程式を考えることになるが、変数が多くなると数値計算上の工夫が必要である。先立って、どのような数値計算スキームが適しているかを別の方程式系で検証が終わった段階 (システム制御情報学会の特集号へ和文として受理済み) である。とりわけ、セリンプロテアーゼの相互作用ネットワークに着目した数理モデルを今現在解析中であり、まとまり次第論文として投稿する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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