今後の研究の推進方策 |
25年度の量子異常ホール効果の知見を基盤に、強磁性体とトポロジカル絶縁体(TI)界面でのディラック電子の研究を進める。 現在、薄膜合成に使っている基板はInP(111)基板である。強磁性のターゲットである強磁性酸化物の上に(Bi,Sb)2Te3薄膜を製膜するために酸化物基板上に(Bi,Sb)2Te3薄膜を高品質で合成する必要がある。典型的な強磁性絶縁体のガーネット基板に(Bi,Sb)2Te3薄膜を製膜し合成条件を最適化する。強磁性基板と薄膜下部表面状態界面でスピン偏極すればCrドープ(Bi,Sb)2Te3のように大きな異常ホール効果が観察できるはずである。基板と薄膜の界面に結晶欠陥をつくらないような成長条件を探索する。25年度の研究でCrを30%以上ドープした(Bi,Sb)2Te3はTIではないが強磁性体であることが分かってきた。そこで、高濃度Crドープ(Bi,Sb)2Te3の超薄膜と(Bi,Sb)2Te3の2層膜で本研究の目的の界面が実現できると期待する。結晶構造が同じなので結晶欠陥のない理想的な界面である。 TIと強磁性体との界面の他に、TIとバンド絶縁体界面についても研究を進める。これまでの研究で基板に使っているInP(111)との界面はディラック表面状態を保っていることを解明した。他の研究ではTI体と真空状態との界面の表面状態はよく調べられていても、実は固体との界面でディラック表面状態が存在していることを調べた研究は少ない。固体との界面でもディラック表面状態が保たれるのであれば、例えばTI/バンド絶縁体薄膜/TI/InPのような2層膜の面内伝導はどうなるのであろうか。バンド絶縁体薄膜が十分厚いときは2種類のディラック表面状態の並列回路、薄くしていくと一つのディラック表面状態が期待できるだろう。このように、薄膜技術を向上させていくことでTIの界面の研究をさらに広げていく。
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