研究課題/領域番号 |
25871135
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 崇将 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (50525904)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トップダウン型注意 / 頭部固定型視覚的注意課題 / マウス視覚野 |
研究実績の概要 |
最近本提案研究のコンセプトに近い研究成果(Pinto et al., 2013; Zhang et al., 2014; Makino & Komiyama, 2015; Wimmer et al., 2015)が発表され,方針転換を余儀なくされたため前年度予定した計画はほとんど実施できなかった.これらの研究は共通して抑制性回路の重要性を示唆しており,研究のトレンドとして細胞種特異的な神経活動を区別することが求められている.また,注意の機構に関与する神経回路は様々なアプローチで調べられているが,その多くにおいて2つのエリア間における相互作用を調べている.特に大脳皮質では複数の領域間でより複雑な相互作用が存在すると考えられるため,神経活動の広域同時記録が必要であると思われる.したがって,本提案の目的を堅持しつつ,既に発表された研究を凌駕するには下記のアプローチが必要と考えた: (1)細胞種特異的な広域皮質イメージング (2)慢性的な学習過程のイメージング (3)頭部固定下における注意タスク (1)に関しては提案者が別のエフォートで実施しているプロジェクトであり,こちらの完成を優先させることで本提案研究においても上記アプローチを導入でき,当初の目的達成の筋道から大きく外れずに済むばかりかそれ以上の発展につながると考えた.また,目的達成のために最も重要である注意タスクについては未だそのアイデアはオリジナルであるため,前年度までに試作したタスクシステムを実際のマウスを使って評価し完成させ,広域皮質イメージングを実施することを次年度の最低限の目標とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度までに視覚的注意課題のタスクシステムは概ね完成した.さらに,細胞種特異的広域カルシウムイメージングのシステムも既に確立され稼働しており,すぐに本提案研究に追加できる状態である.本提案研究の目的達成までには,実際のマウスを用いたタスクパラダイムの評価とパラメータの最適化,タスクシステムの多チャンネル化,および2光子イメージングや広域カルシウムイメージングなどの生理学的実験が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
実際の野生型マウスと構築したタスクシステムを用いてタスクパラメータの最適化を行う.まず,単純な視覚弁別課題をマウスに課して左右いずれかの舐め口に反応させることから始め,左右の舐め分けを学習させる.ある程度学習の目途が立った時点でシステムの多チャンネル化を行う.視覚刺激提示時間やキュー刺激からの遅延時間,試行感覚などのパラメータの最適化を図り,視覚刺激のパターンもマウスが反応しやすいものに最適化する. 続いて,タスクの学習が成立する過程において,神経細胞種特異的にカルシウム感受性タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを用いて細胞種特異的広域カルシウムイメージングを行う.聴覚刺激であるキュー刺とターゲット刺激である視覚刺が合わさった時に皮質上のどこでどのようなタスク関連応答を引き起こすのかを調べる. さらに,タスクの学習が成立した興奮性ニューロン選択的Cre発現マウスの前頭全皮質または広域イメージングで特定したタスク関連領域にCre依存的カルシウム感受性タンパク質発現アデノ随伴ウィルスベクターを注入して感染させ,視覚野におけるトップダウン信号投射の有無を確認する.投射が確認できたら,ターゲットエリア浅層の軸索終末におけるカルシウム応答の2光子イメージングを行い,タスクパファーマンスとカルシウム応答の変化の相関を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画の達成目標に関連した研究成果が昨年発表され,方針転換を余儀なくされた.平成27年度は、その方針転換として神経活動の計測手法に他の研究チームが達成していない細胞種特異的広域カルシウムイメージングを追加することとし,そのシステム開発と論文執筆を優先させ,実験に係る必要経費を執行できなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
注意タスク多チャンネル化のためのシステムの複製に使用.
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