研究実績の概要 |
最近本研究のコンセプトに近い研究成果が発表されて(Pinto et al., 2013; Zhang et al., 2014; Makino & Komiyama, 2015; Wimmer et al., 2015; Schmitt et al., 2017),研究の方針転換を余儀なくされたが,その中でも最終年度においては「細胞種特異的な広域皮質イメージング」技術の開発とその確立に注力した.前述の研究では共通して注意メカニズムにおける抑制性回路の重要性が示唆された.また,注意機能に関与する神経回路を調べる際には2つの領域間における相互作用を調べることが殆どであるが,本質的には複数の領域間における相互作用が重要であり,それを広域的に同時記録する必要がある.これらを鑑み,細胞種特異的な神経活動を大脳皮質全体で記録する広域イメージング手法を用いることで,本提案の当初の目的を維持しつつ,既に発表された研究を凌駕することができると見込んだ. 具体的には,広域イメージング行うためのマクロ顕微鏡システム(マウス頭部固定型全脳イメージングシステム)の開発とそのイメージングデータの解析手法の確立を行った.さらに,そのシステムの評価のための実験を行って論文を執筆し投稿した.その中で,多感覚刺激を入力した際に徐波振動が皮質全体にわたって位相同期することを発見し,感覚領野と比較して連合野の方が位相同期の程度が大きいことも分かった.投稿論文の査読コメントに対する改訂用の追加実験を行い,間もなく再投稿する予定である. 本研究では前半でマウス用の頭部固定型視覚的注意課題システムのハードウェアとソフトウェアを開発した.さらに後半で,課題中の広域神経活動を記録するイメージングシステムを開発した.これらのシステムを組み合わせることで,より本質的な注意の神経メカニズムにアプローチできるようになると期待される.
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