研究課題/領域番号 |
25871136
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
津川 裕司 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (30647235)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタボロミクス / データ解析 / バイオインフォマティクス / 質量分析 / 液体クロマトグラフィー |
研究概要 |
当該研究では,液体クロマトグラフィー三連四重極型質量分析(LC-QqQ/MS)を用いたメタボロミクス研究のためのデータ解析ソフトウェア,MRMPROBSの開発を行った.MRMPROBSは,QqQ/MSにおいてmultiple reaction monitoring(以下,MRM)を用いたワイドターゲットメタボロミクスを行うためのソフトウェアであり,生データの読み込みから統計解析に至るすべての行程をサポートしている. MRMとは,最適なprecursor ionとproduct ionを選択し,目的代謝産物に特化したtransition条件を設定することで目的代謝産物の高感度な分析が可能となる.また近年,装置スキャンスピードの向上により一秒あたり500 transition以上を取得することが可能になっており,一度の分析に数百もの代謝産物を測定することが技術的に可能になってきている. このように分析装置で一度に取得できるデータ量が増え,さらに測定する対象化合物も多岐に渡るようになったことから,解析者の目視手作業による解析では膨大な時間と労力を要する.さらに,このような主観的な解析では得られる結果の再現性が得られないという問題が起こる. MRMPROBSは,実験により得られたクロマトグラムのピークをスコアリングし,ライブラリーのスペクトルと比較することでベイズ確率を出力し,客観的な化合物同定を自動的に行うことが可能である.さらに,大量データを円滑に解析するためのgraphical user interfaceも備えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「MRM」を用いたメタボロミクス・リピドミクス研究を行うための「ソフトウェア」の基盤はほとんど構築できたと考えられる.これは,共同研究者の真摯なアドバイス並びに,自身が実験を行いソフトウェアを評価することで「現場」で求められているものを実感できたからだと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
残された技術課題は2点,すなわち各社質量分析メーカーの出力フォーマットすべてに対応する「ロバスト」なシステム,並びに化合物の保持時間・スペクトルデータベースを構築することである. 現在,すでに主要な質量分析メーカー4社については対応が完了している.残り1社に対しては今年のアメリカ質量分析学会にて打ち合わせを行う予定である. データベースに関しては,すでに400代謝産物の保持時間・スペクトルデータベースを構築しているが,今後も拡張を続ける予定である. 本ソフトウェアは大学・企業に関わらず,創薬研究並びに臨床研究においてすでに活用されている.今後は,特に臨床分野に真に適応するためのソフトウェア開発を続ける.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,当初の計画通りの額とほぼ同じである. 本年度の助成金は,主に研究開発のための基盤構築のために用いた.具体的には,コンピューター並びに必要な解析ソフトウェアの購入である.また,出張費にも用いた. 次年度では,出張費並びに論文投稿費用が必要であるため,翌年度分として請求した. 次年度は,アルゴリズム評価用のソフトウェア,及びデータを格納するためのハードディスクを購入する予定である.また,国際学会や共同研究先への出張費並びに論文投稿費用にも,本助成金を使用する.
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