研究課題/領域番号 |
25871145
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
梅木 伸久 独立行政法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 研究員 (70647502)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Ras / 構造多型 / 細胞内情報伝達 / 一分子計測 / 低分子量Gタンパク質 |
研究概要 |
細胞増殖・分化を制御する低分子量Gタンパク質「Ras」は細胞外からの刺激をうけて活性化し、様々な標的タンパク質と相互作用する事によって下流へと情報を伝達する。本研究ではRasが持つ構造多型性の生理的意義を明らかにする為に、1分子計測技術を用いて標的タンパク質との相互作用能を、試験管内・細胞内の両実験系において解析する。 H25年度はそのための予備的実験に終始した。まず大腸菌発現系および昆虫細胞発現系の構築を行い、試験管内実験に必要な標的タンパク質(RalGDS-GFP, RasGEF-GFP,GFP-Raf等)を調製する事に成功した。また調製したRasはケミカルに蛍光標識した(Alexa-595蛍光標識)。蛍光標識したRasの生理機能が失われていない事を、Rafとの結合能を調べる事により確認した(EDC架橋によるX-link実験)。一方、細胞内計測における予備的実験では、動物細胞用の発現ベクターの構築を行ったのち、Ras標的タンパク質をHela細胞内で発現させ、1分子蛍光観察した。テトラメチルローダミンの蛍光強度は、我々の研究室が保有する1分子蛍光観察用の顕微鏡システムで観察する為に十分である事がわかった。先攻の研究報告によると、RalGDSの細胞内局在は、EGF刺激後に細胞質から細胞膜へと移行する。そこで次に、EGF刺激に伴うRalGDSの細胞内局在の変化を調べた。EGF刺激3分後には細胞膜への移行が観察され、さらに長時間にわたり(約1時間)膜における局在が持続する事がわかった。この事は、細胞膜上のRasの活性化状態を反映している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H25年度中に試験管内および細胞内における1分子計測の予備的実験を終了させる予定であった。細胞内実験においてはRas-Ralgds相互作用を1分子蛍光観察する事に成功しており、おおむね順調に進展したといえる。しかし試験管内実験における予備的実験では、当初の計画より若干遅れが生じている。調製したRasをカバーガラス上に抗体を介して貼付け、溶液中のRalGDS-GFPとの相互作用を観察する予定であった。しかしRalGDS-GFPがRasとは無関係に非特異的にガラス表面に吸着してしまう事が判明した。非特異的吸着を防ぐ為にBSA-カゼインによるブロッキング法を採用していたが、他の方法を検討する必要性が生じ、現在様々なブロッキング法を試しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に遅れが生じている試験管内実験については、ブロッキング方法の確立が急務である。ブロッキング方法の一つとして、脂質膜によるブロッキングを検討している。そこで脂質膜を専門に取り扱う研究チームと共同で行う事によってこの予備的実験を加速させる。さらにガラス基板上でのブロッキング法を検討している他の研究員が研究室内にいるので、その研究員と緊密に意見交換をし、場合によっては役割分担するなどしてお互いの研究を加速させる。細胞内における実験はおおむね順調に進展しているが、研究をさらに加速するために、今以上の情報交換を心掛ける。特に研究室内には細胞内1分子蛍光観察の専門家および顕微鏡のメンテナンス・組み立て・最適化を行う専門家がいるので、彼らのアドバイスを適宜受けることで研究を更に加速させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画ではH25年度中に高感度CMOSカメラ(1,850千円)を本研究予算で購入・設置の予定であったが、研究室の他の予算で購入が決定したため、余剰金が発生した。 研究実績の項で記述した様に、H26年度にブロッキング法の確立を行う必要があり、その為に脂質など高額な試薬類が必要である。H25年度分で生じた余剰金はH26年度の消耗品類に充当する。
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