研究課題
若手研究(B)
粒子線治療におけるTLDを用いた線量測定法を確立するために放射線医学総合研究所重粒子線治療用加速器HIMACを利用し、様々な粒子線に対する複数のTLD素子の応答を測定した。HIMACにおいて陽子、ヘリウム、炭素、ネオン、アルゴン、鉄イオンビームを利用し、広いLET領域に対してTLDの応答を測定した。TLDは汎用的なLiF、BeO、CaSO4(Tm)のみならず首都大学東京眞正氏の開発した組織等価型スラブTLD(Li2B4O4)を利用した。また、詳細な熱蛍光特性を調べるために非常に遅い昇温速度で熱蛍光とその発光波長を測定できるシステムを構築し、各TLDのグロー曲線を高精度に測定した。本年度は組織等価型スラブ型TLD(Li2B4O4)のグロー曲線のLET依存性を詳しく測定し、熱蛍光効率のLET依存性をグロー曲線を用いて補正する手法についての重点的に研究を行った。本手法を用いることにより、治療用炭素線や陽子線の線量分布を組織等価型スラブ型TLD(Li2B4O4)を用いて3次元的に測定できることが示された。しかし治療用炭素線の測定の場合、熱蛍光効率の補正により線量誤差が10~40%生じてしまうことが分かった。線量誤差の原因となる組織等価型スラブTLDの劣化や着色を改善する必要があり、組織等価型スラブTLDの生成方法などを今後検討することなった。これらの結果については国内外の学会、研究会にて発表を行い、論文として公表している。また今後、LETによってグロー曲線が変化する現象を詳細調べることにより、TLDの線量依存性、LET依存性等を包括的に説明できるモデル構築を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に記載した通り平成25年度は高精度に熱蛍光を測定できるシステムの構築と放射線医学総合研究所重粒子線治療用加速器HIMACを利用した様々な粒子線に対する複数のTLDの熱蛍光特性を測定することができた。組織等価型スラブTLDに着目してグロー曲線のLET依存性を詳細に調べ、その特性を利用することにより治療用陽子線と炭素線の線量分布測定が可能であることを示した。
平成25年度では主に組織等価型スラブTLDに着目していたが、その他のTLD素子についても同様な手法によりグロー曲線のLET依存性を調べ、治療用粒子線の線量分布測定に応用できるか検討を行う。平成26年度においてもHIMACを利用した様々な粒子線を利用した実験を行い、これまでの測定データの高精度化、拡充を図る。以上の成果の応用として、複数のTLDを利用することにより粒子線治療場の線質を詳細に調べる手法の確立を目指す。また組織等価型スラブTLDを利用した粒子線の線量分布測定法の精度を向上させるため、首都大学東京の研究グループと共同研究を行い、劣化や着色や生じにくいタイプのスラブTLDの開発を目指す。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
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