粒子線治療におけるTLDを用いた線量測定法を確立するために、昨年度に引き続き放射線医学総合研究所重粒子線治療用加速器HIMACを利用し、様々な粒子線に対する複数のTLDの応答を測定した。使用した粒子種は昨年度と同様に、陽子、ヘリウム、炭素、ネオン、アルゴン、鉄である。今年度は組織等価型スラブTLD(Li2B4O4)に加えて、新素材のTLDとして首都大学東京の眞正氏の開発を行ったセラミック型のTLDの測定も行った。 組織等価型スラブTLD(Li2B4O4)を利用した重粒子線治療における線量測定への応用手法としてグロー曲線のLET依存性を利用した補正法に関する研究を行った。本手法を応用し、組織等価型スラブTLDによって治療で用いる拡大ブラッグピーク(SOBP)の線量分布の測定を行った。拡大ブラッグピークの測定ではLETスペクトルが広がっていることの影響により、本補正法では十分な精度を達しえないことが明らかとなった。 新素材として使用したセラミック型のTLDでは特定のグローピーク解析を行うことにより、LET依存性の非常に小さい、線量応答が得られることが分かった。このセラミック型のTLDと本研究のグロー曲線解析法を用いることにより、陽子線や炭素線などの粒子線治療のようにLETが大きく変化する線量場の線量測定を精度良く行える可能性を示した。
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