自然界には食用山菜と類似した有毒植物が多く存在している。その中でも、バイケイソウは、誤食による中毒の発生件数が日本で最も多いものである。形態による検査など他の方法による検査が難しい場合であっても、DNA解析により分析可能となれば、中毒事案の解明に役立つ。本研究は、種特異的なDNA領域を利用することにより、バイケイソウの迅速正確な特定を目指す。 最終年度では、trnL-trnF上のバイケイソウ種特異的な領域を利用してLAMP法による検出を試みた。LAMP法とはLoop-Mediated Isothermal Amplificationの略であり、標的領域に対して設計した特殊なプライマーを用いて、一定温度(65℃付近)で保温することにより反応が進む、高い特異性、増幅効率を持つ遺伝子増幅法である。迅速で簡易に検査可能であることから、医療、食品、環境、農業、畜産といった幅広い分野において遺伝子検査法として用いられている。 バイケイソウのLAMP法による試験を行ったところ、80 pg のDNAから検出可能であった。バイケイソウおよび近縁植物、他の誤食の原因となる有毒植物、バイケイソウと形態が類似している山菜のオオバギボウシやギョウジャニンニクを用いて特異性の確認を行ったところ、ターゲット特異的な検出ができた。バイケイソウと同じく芽生えの形態がオオバギボウシに類似するために食中毒の原因となるイヌサフランや、食用のオオバギボウシ、ギョウジャニンニクについても陰性であった。よって、当試験による疑陽性の危険性はないことが示唆された。Real-time PCRと同様に、加熱等の調理処理を行った試料や人工胃液で処理した模擬胃内容物についても検査を行ったところ、LAMP法においても同定可能であった。 以上の結果から、LAMP法により、バイケイソウを少量から特異的に検出できると考えられた。
|