研究課題/領域番号 |
25871152
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
東方 孝之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (70450533)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地方分権 / インドネシア / 影響評価 / 自然実験 / 地方分立 / 公共財 / 投票行動 |
研究概要 |
本研究では、インドネシアを事例に、(1)地方分権化が住民の厚生水準に与えた影響と、(2)地方分権化に伴う厚生水準の変化が住民の投票行動に与えた影響、について定量的に厳密な手法で分析する。インドネシアでは、中央政府から権限が委譲されることになった地方自治体(県・市)の数が増え続けており、地方分権化の導入直後に354あった県・市が、分裂を繰り返した結果、500近くにまで膨れ上がっている。この地方分立の過程で生じた自然実験的状況に着目し、地理的に小さな行政単位への権限委譲がもたらした影響を厳密なかたちで定量分析することを目指している。 初年度にあたる平成25年度は、まず、地方分権化に関する先行研究サーベイを通じて理論的枠組みを整理し、検証すべき仮説の精緻化を図った。次に、地方自治体の分立に伴い制定された法令などの資料を活用して、自然実験的状況が生じた地域の選出を進めた。第三に、政府が実施している家計調査結果や村落悉皆調査結果について、それぞれ個票データの最新版を入手し、後者については村レベルのパネルデータの構築を進めた。このパネルデータの構築は自然実験的状況が生じた地域を中心に進めている。また、地方自治体の財政状況についてもデータを入手し、入力作業を進めている。最後に、投票行動を確認するために、2009年に実施された総選挙結果資料(県・市単位の集計値)の入手・整理を行った。さらに、2014年の総選挙を直前に控えて、住民の投票行動についての一次情報を得るべく、いくつかの村・地区を訪問してヒアリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、初年度は先行研究の整理、自然実験対象地域の選出、個票データの入手ならびにパネルデータの構築作業と順調に進行した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、まず、初年度に進めていた村レベルのパネルデータを完成させ、公共財の供給水準の変化について自然実験的状況を利用して、仮説の検証を行う。この分析結果については、セミナーや学会などの報告を通じて精緻化を進め、ディスカッション・ペーパーとしてまとめる。次に、2014年4月に実施された総選挙においては、地方議会議員選挙も行われたため、その結果について投票所や村レベルでの情報の入手を試みる。また、2009年総選挙結果については県・市レベルでの集計結果が揃ったため、全国的な投票行動の分析を行う。この分析結果については、インドネシア総選挙に関する和書の一章として掲載される予定である。最後に、家計調査結果を用いて県・市ごとの消費や保健・教育水準など、厚生水準の変化を確認するため、県・市レベル(ないしは村レベルの)データセットを構築する。 平成27年度以降においては、前年度に執筆した論文(ディスカッション・ペーパー)の質を高めた上で、ジャーナルに投稿し、公刊されることを目指す。投票行動への影響や、県・市単位での厚生水準の変化についての分析も、データセット構築後に順次、仮説を検証すべく分析を進め、論文としてまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の予算を使って購入する予定であった資料の一部を、研究会において購入することができたため。 平成26年度においては、主に、最新版の家計調査結果(個票データ)の購入と、総選挙・大統領選挙における住民の投票行動に関するヒアリング・資料収集を行うための現地調査に予算を充てる。初年度に使用しなかった資料購入費分については、平成26年度以降の現地調査費ならびに、予算制約上入手を断念していた資料(家計調査結果の個票データや労働力調査結果の個票データ)の購入にあてる。
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