本研究では、生薬中の異性体成分、特に配糖体の位置異性体に着目し、Liquid Chromatography Ion Mobility Spectrometry Mass Spectrometry (LC-IMS-MS) 分析の有用性を検討するとともに、LC-IMS-MS分析装置を用いた新たな生薬の品質評価法の確立を目指す。本年度は、昨年度に引き続き,山梔子由来のイリドイド配糖体とキャッツクロー由来の五員環アルカロイドについて、イオンモビリティー分離の有用性を検討した。山梔子エキスの分析では,同一質量を有するイリドイド配糖体の異性体と推定される化合物群の分離が確認できたが,標準品を利用した同定にまでは至らなかった。キャッツクローから単離された五員環アルカイドを対象とした分析では,ドリフトタイムから算出した衝突断面積の実測値と,分子シミュレーションにより算出した衝突断面積の理論値が比較的近い値を示した。以上のことから、イオンモビリティーによって分離可能な化合物のサイズや構造について、有用な知見を蓄積することができた。
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