本研究では、野生動物が保有する水系感染症病原微生物の疫学的調査を行った。全国の自治体から野生ニホンジカの試料採取協力を得て、9都道府県から合計251頭分の試料を採取し、1都道府県の5地域から原水試料を採取した。 結果、5都道府県のシカ糞便試料からクリプトスポリジウム陽性検体が確認され、その陽性率は2 %から20 %であった。雌雄での陽性率は雄で8.9 %、雌で4.1 %であった。遺伝子配列をもとに種同定した結果、ウシを優先宿主とする種にシカも感染する事が分かった。原水試料から検出された種はそれらとも異なっていたため、現段階の水源汚染源はニホンジカ以外の動物種によるものと考えられた。
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