研究課題/領域番号 |
25871157
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
稲葉 洋平 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (80446583)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | たばこ特異的ニトロソアミン尿中代謝物 / バイオマーカー / 喫煙 / 曝露指標 |
研究概要 |
たばこ葉及びたばこ煙中には4種類のTSNAが含まれ,特に,4-(methylnitrosoamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone(NNK)は,国際がん研究機関(IARC)の発がん性リスク一覧においてGroup 1(ヒトに対する発がん性が認められる)に指定されており,喫煙者の健康に影響を与えると懸念されている。このNNKは,生体内で4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanol(NNAL)に代謝後,尿中に排泄されることから,尿中NNAL量は,たばこ煙中発がん性物質の曝露指標となると考えられる。そこで本研究では,尿中NNALの測定法を確立することを目的とした。 尿中NNALの抽出を目的として3種類のカラム(ケイソウ土カラム,ENVI-Carb,Oasis-MCX)を組み合わせた固相抽出法を検討した。各カラムの最適条件は,ケイソウ土カラムの溶出液がジクロロメタン/2-プロパノール溶液(95/5),ENVI-Carbが0.1%酢酸含有50%メタノール溶液,Oasis-MCXが2%アンモニア含有メタノール溶液となった。次に,グルクロン酸抱合体の脱抱合処理の検討を酵素β-グルクロニダーゼを用いて行った。その結果,酵素反応は,尿試料2.5 mLに10,000 unitsの酵素を添加し,pH 4.5,37℃,40時間とした。続いて,喫煙者の尿試料を用いて同時再現性測定(3試料,n=5),日間再現性測定(3試料,n=3/日,5日間)を行ったところ,変動係数(CV)は2.8-6.0%,1.3-5.1%となり,安定した結果が得られた。さらに,添加回収試験(2試料,n=3)によるNNALの回収率は71.0-126%であり,本測定法による尿中NNALの定量下限値は,2 pg/mLであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は,おおむね予定通りに研究は進んだ。尿中4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanol(NNAL)の前処理法の確立に加えて,高速液体クロマトグラム/質量分析装置の分析条件設定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,確立した尿中NNAL前処理法とLC/MS/MS分析を組合わせたNNAL測定法を利用し,これまでに申請者が喫煙行動,各種バイオマーカーの測定を行った日本人喫煙者100名の尿試料の測定を行う。また,これまで未測定項目であった尿中ニコチン代謝物(ニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニン),脂質の酸化ストレスマーカーである8-イソプロスタンの測定も行う。最終年度では,本研究において得られた尿中NNAL量等と,これまで申請者が行ってきた日本人喫煙者の喫煙行動とバイオマーカーとの関係性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に実施する喫煙者の尿中NNALの分析に必要な数種類の固相抽出カラムとグルクロン酸抱合体と反応させる酵素及びLC/MS/MSの分析用カラムの購入に費用がかかるため。さらに,尿中ニコチン代謝物(ニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニン),脂質の酸化ストレスマーカーである8-イソプロスタンの分析も行うために消耗品の購入費が必要になるため。 酵素反応処理を行った尿試料を珪藻土カラム,ENVI-CarbそしてOasis-MCXの順に固相抽出を行う。その後,得られた抽出液をLC/MS/MSに供する。また,これまで未測定項目であった尿中ニコチン代謝物(ニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニン),脂質の酸化ストレスマーカーである8-イソプロスタンの分析も行う。
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