日本において内視鏡を用いた大腸癌スクリーニングの医療経済的評価が皆無に等しい状況下、マルコフモデルを用いた検討から、日本における大腸癌スクリーニングの医療経済性について、どのようなスクリーニング方法が最も医療経済的に妥当なのか検討していくのを目的として、本研究を開始した。 日本の臨床データを用いて、大腸癌についてシミュレーションモデルを作成の上、40歳以上の平均的リスクの人口に対して、現行の対策型検診のように便潜血検査を主体とする検診を受ける場合に加え、全大腸内視鏡検査をはじめから行う検診を受ける場合、便潜血検査を主体としつつ大腸内視鏡をある特定の年齢に必ず行う検診を受ける場合、大腸癌検診を受けない場合について費用対効果分析を行った。分析の際、費用のデータも臨床データ同様、日本のデータを収集のうえ使用した。 分析の結果、どの大腸癌検診についても、受けない場合よりも受ける場合の方が費用対効果に優れることが明らかになった。さらに、大腸癌検診の中では、現行の便潜血検査を主体とする検診よりも、全大腸内視鏡検査を積極的に用いる方が、費用対効果に優れることが示された。但し、全大腸内視鏡検査をはじめから使用する場合は、全大腸内視鏡検査数がより多く必要となることも今回の分析から示され、その点を考慮すると、施行可能な内視鏡検査数によっては、便潜血検査を主体としつつ全大腸内視鏡検査をある特定の年齢に必ず行う検診戦略も考慮すべきと考えられた。
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