研究課題
炎症性腸疾患の背景には、本来異物や異常な自己成分を認識、排除する免疫系の異常が存在すると推定されており、免疫応答の司令塔であるT細胞の分化及び機能の機構解明は急務である。T細胞には典型的T細胞(CD8陽性キラー/CD4陽性ヘルパー)に加えて、非典型的T細胞(制御性T細胞、NKT細胞および腸管上皮内リンパ球)が存在し、その免疫制御活性が近年注目されている。腸管上皮内リンパ球のうち、TCRαβCD8ααIEL(以下IEL)は胸腺で自己抗原に強く反応して分化し(アゴニストセレクション)、誘導型腸炎の抑制能を有することが知られているものの、分化・活性化の機序については未知な点が多い。本研究では、IELの分化・活性化機構の解明を目的とし、以下の2つの課題に取り組んだ。課題1 腸炎抑制の機構解明に関して、26年度は免疫不全マウスにおけるIEL移植の手法確立がほぼ終了した。またin vitroにおいてIELとエフェクター細胞とを共培養した時、エフェクターの増殖抑制能を有するという予備的な実験結果を得た。抑制活性の詳細を解析するために、その細胞学的解析すなわちサイトカイン産生や、細胞表面マーカーの解析を進めている。課題2 分化・活性化に重要な分子に関して、ISC1はIELの分化に関与しないが、サイトカイン産生に必須であることが明らかになった。また、IEL前駆細胞(TP細胞)の解析に関しては、TP細胞を用いる代わりに本年度他のグループから報告されたDP(lo) PD1(hi)細胞を用いることとし、現在解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
課題【1】に関して、前年度はIEL精製が技術的に難航したが、今年度は精製法の向上をはかることができた。また、in vitroにおけるエフェクターT細胞とIELとの共培養実験から、IELがエフェクター抑制活性を有するという予備的な実験結果を得ることができた。課題【2】に関して、ISC1KOIELの解析を行った。また、IEL前駆細胞とIELの遺伝子発現解析については、今年度他のグループにより新たなIEL前駆細胞(DPlo PD1hi)が報告されたため、DPlo細胞を用いた生化学的解析を開始した。
課題【1】に関しては、活性化IELの細胞学的および生化学的表現型の解析を行う。具体的には、細胞表面マーカー、細胞死率、細胞内サイトカイン産生について検討するとともに、発現する遺伝子の違いについて検討を行う。課題【2】に関して、26年に他の研究グループから、IEL前駆細胞はTriple positive(TP)細胞ではなくDP(lo)-PD1 hi 細胞であることを示唆する発表がなされた。そのため、これまでに計画していたTP細胞の解析ではなく、DP(lo)-PD1細胞に着目し、IELとの差異を比較検討する。
第二子出産のため、26年度に産休を取得し研究中断したため。
主に抗体、酵素などの試薬購入に使用し、一部は学会発表等の旅費に使用する予定である。
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EMBO Rep
巻: 16 ページ: 638-53
10.15252