研究実績の概要 |
血清脂肪酸組成を日本人とスリランカ人で比較し、国別に血清脂肪酸組成と動脈硬化との関連を検討した。日本の解析対象は、国立国際医療研究センター病院の糖尿病・高血圧・脂質異常症患者のうち、データの揃った236名(男性142名、女性94名)である。スリランカの解析対象は、ラガマ整形外科リハビリテーション病院の糖尿病・高血圧・脂質異常症患者のうち、データの揃った100名(男性54名、女性46名)である。リン脂質中の脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーにて測定し、動脈硬化の指標であるcardio ankle vascular index (CAVI)の測定はVasera-1000 (フクダ電子)を用いた。共分散分析により、性・年齢調整脂肪酸平均値を計算し、両国間の差を検定した。さらに、多重回帰分析により脂肪酸割合の各三等分位に対するCAVIの調整平均値を国別に計算し、傾向性を検定した。 その結果、スリランカ人は日本人に比べて、偶数鎖飽和脂肪酸のミリスチン酸(14:0)が高かった。日本人では、奇数鎖脂肪酸(15:0, 17:0)、リノール酸(18:2 n-6)、α-リノレン酸(18:3 n-3)、エイコサペンタエン酸(20:5 n-3)が高かった。また、スリランカ人で奇数鎖飽和脂肪酸(15:0+17:0)、特にヘプタデカン酸(17:0)とCAVIとの負の関連がみられた(傾向性P=0.04)。その他の脂肪酸については、両集団において明らかな関連は見られなかった。 スリランカで多用されるココナツ油に豊富なミリスチン酸がスリランカ人で多く、植物油に豊富なリノール酸やα-リノレン酸、魚に豊富なEPAが日本人で多かった。スリランカ人において、牛乳・乳製品や魚に多く含まれる奇数鎖脂肪酸が動脈硬化進展に予防的であることが示唆された。
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