研究課題/領域番号 |
25871169
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
高橋 理貴 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所神経薬理研究部, 科研費研究員 (00549529)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | non-coding RNA / Huntington's disease |
研究概要 |
本研究は「変異型ハンチンチンタンパク質の病的な核内凝集体形成」と「核内構造物(パラスペックル)形成必須因子である非コードRNA・MENb」との関連性を明らかにすること目的としている。目的達成のため本年度は、in vitro実験評価系確立に重要となる神経系培養細胞株(Neuro2A細胞、SH-SY-5Y細胞)を用いたGFPタグ結合変異型ハンチンチン遺伝子の安定発現細胞株の樹立を行った。蛍光顕微鏡観察とウエスタンブロット法により導入遺伝子の発現を確認し、分化誘導や酸化ストレス負荷の有無によって細胞生存率への影響を確認した。その結果、何れの処置によっても、核内封入体は観察できるが細胞生存率については影響がないことが分かった。また、MENbの発現を確認した結果、これについても有意な変化は見られなかった。これらの結果を個体レベルで検証すためにハンチントン病モデルマウス(R6/2)とこれに対応する野生型マウスより脳組織をサンプリングし、MENbの発現解析を行った。その結果、生後5週齢以降のモデルマウスでは大脳皮質および線条体でMENbが発現上昇していることが分かった。上記結果より、細胞レベルでは変異型ハンチンチン遺伝子による封入体の形成は観察できるが細胞死やMENbの発現に影響はない事、個体レベルでは発症(行動学的運動機能異常見られる)時期よりMENbの発現が上昇している事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画していた細胞レベルの実験、及び個体レベルでの実験を予定通り開始することができた。細胞レベルの実験では、2種類の神経系株化細胞(Neuro2A細胞、SH-SY-5Y細胞)を用いて変異型ハンチンチン遺伝子の安定発現細胞株を作製し、MENbの発現解析を進めることが出来た。また個体レベルの実験では、予定より早くモデルマウスと野生型マウスの繁殖と時経列的にサンプリングを進めることができたため、このサンプルを用いてMENbやその他の長鎖非コードRNA(lncRNA; Malat1、Gomafu)の発現解析を行い、それらlncRNAの脳内時空間的発現変化を明らかにすることができた。また興味深いことに、それらlncRNAに干渉する可能性があるsmall non-coding RNA(sncRNA)を見い出したため、現在その真偽についても合わせて検証している。 上記進行状況より、初年度における研究計画は概ね順調に推進することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画通りに、細胞レベルでのMENbと変異型ハンチンチンの局在と結合の有無、個体レベル(モデルマウス)でのタンパク凝集体(変異型ハンチンチン由来の核内封入体)と核内RNA凝集体(MENb含有構造物)との局在を免疫染色等で明らかにすることを目指す。また、本年度見つけたlncRNAに干渉する可能性があるsncRNAについても検証を進めて行く方針である。
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