研究実績の概要 |
統合失調症における認知機能障害は、機能的転帰と強く相関しており、その治療法の確立が急務である。本研究では、ワーキングメモリ障害に焦点を当て、ワーキングメモリ障害のリハビリテーション法を開発することを目的とした。最終年度は、昨年度から実施中のリハビリテーションを継続し、リハビリテーション前後での心理検査の結果を比較し、その効果を検討した。統合失調症患者12名において、認知機能評価尺度であるBACS(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia) のcomposite scoreは平均0.670(z-score)改善しており、有意な改善効果が得られた(p<0.05)。本研究で開発したリハビリテーション法が被験者数を増やしても効果的であることが示唆された。 これまでの先行研究において、種々の認知矯正療法(CRT)の有効性が報告されている一方、CRTに関するRCTの質についての検討は必ずしも十分行われていなかった。認知行動療法(CBT)に関して、RCTの質と効果サイズが逆相関することを考慮すると、CRTに関するRCTの質についての検討は重要である。先行研究のCRTメタアナリシスで使われた38の研究の臨床試験評価尺度 (Clinical Trials Assessment Measure, CTAM)値と認知機能の効果サイズについて検証した。CTAM65点以上の質の高い研究のみで相関を検討すると、認知機能の効果サイズと有意な負の相関がみられた(r=-0.651, p=0.022, Spearman) 。このことは、CRTを用いた研究結果の検証の際にRCTの質に注意する必要性があることを示している。この点に留意した正確なリハビリテーション効果を明らかにするため、RCT研究を実施する予定である。
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