研究課題/領域番号 |
25871171
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
宮川 尚久 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 流動研究員 (60415312)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 霊長類 / 行動 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
マーモセットの行動実験系を自由行動系からチェア拘束系に切り替えた。頭部を固定した状態でも、餌に対する注視や手伸ばし、他個体との鳴き交わしを行うことを確認した。本研究の大目標である社会性を担う神経回路として、他個体との鳴き交わしに運動前野の一部および角回近傍の聴覚連合野が関わるというデータを得た。また、申請者と同じ研究部門に在籍する研究協力者が、頭部固定チェアでの精緻な視線計測を成功させた米国の研究者らの下を査察し、訪問先と同仕様のチェアおよび防音室からなる実験システムを構築した。げっ歯類で行ったパイロット実験では、AAVベクターにより光遺伝学用機能蛋白の導入を確立した。ChR2を発現させた動物では光刺激により神経細胞の発火頻度上昇を、ArchTを発現させた動物では光刺激により神経細胞の発火頻度抑制を引き起こすことに成功した。 また、ArchTは最適とされる高価な黄色レーザーではなく、1/10程度の安価な緑色レーザーにより十分な光抑制を引き起こすことに成功した。平成26年度中に遺伝子導入を行った動物では必要量の発現が得られなかったが、27年度の再実験では、視覚野V1への注入により一次投射先のV2およびMTへの投射線維に非常に強い遺伝子発現が見られた狙い通りin-vivoでもレポーター蛍光蛋白の発現が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他者の視線の動きに対して応答する神経細胞数が、予備データから予想されたよりも少ないという問題が生じた。しかし我々は、本研究の大目標である社会性を担う神経回路として、他個体との鳴き交わしに運動前野の一部および角回近傍の聴覚連合野が関わるという別の予備データを得ていた。よって本研究では、光遺伝学による賦活化と抑制を用い、この神経回路が鳴き交わし行動の神経基盤になるかを、合わせて研究の対象とすることにした。マーモセットの行動実験系を自由行動系からチェア拘束系に切り替え、頭部を固定した状態でも餌に対する注視や手伸ばし、他個体との鳴き交わしを行うことを確認した。また、研究協力者が、頭部固定チェアでの精緻な視線計測を成功させた米国の研究者らの下を査察し、訪問先と同仕様のチェアおよび防音室からなる実験システムを構築した。げっ歯類で行ったパイロット実験ではAAVベクターにより、光遺伝学用機能蛋白の導入を確立した。ChR2を発現させた動物では光刺激により神経細胞の発火頻度上昇を、ArchTを発現させた動物では光刺激により神経細胞の発火頻度抑制を引き起こすことに成功した。 また、ArchTは最適とされる高価な黄色レーザーではなく、1/10程度の安価な緑色レーザーにより十分な光抑制を引き起こすことに成功した。平成26年度中に遺伝子導入を行った動物では必要量の発現が得られなかったが、27年度の再実験では、視覚野V1への注入により一次投射先のV2およびMTへの投射線維に非常に強い遺伝子発現が見られた。狙い通りin-vivoでもレポーター蛍光蛋白の発現が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
小形霊長類であるマーモセットを用い、餌に対する注視や手伸ばし、鳴き交わし行動をモニターする実験系の構築に成功した。また光遺伝学に用いる機能蛋白のAAVを用いた発現にも成功した。 今後はこれらの実験系を組み合わせ、種々の社会的な行動における大脳皮質の神経基盤を、光操作による賦活・抑制実験で解析する。光操作による賦活・抑制効果が十分で無い場合には、電気刺激や薬剤(ムシモール)による操作に切り替え、本研究計画の目的を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究の投稿論文が受理にいたらず、また修正・再投稿に予想以上に時間がかかっている。 成果を学術雑誌にて発表するにあたり、現在論文二件の再投稿準備中であり、次年度中の発表を目指している。また国際学会(北米神経科学)での発表も予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の英文校閲および、国際学会(米国 サンディエゴ)への発表・渡航費用に使用する。
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